もやもやレビュー

『月刊予告編妄想かわら版』2026年1月号

『ランニング・マン』(2026/1/30公開)より

毎月下旬頃に、翌月公開の映画を各週一本ずつ選んで、その予告編を見てラストシーンやオチを妄想していく『月刊予告編妄想かわら版』五十三回目です。
果たして妄想は当たるのか当たらないのか、それを確かめてもらうのもいいですし、予告編を見て気になったら作品があれば、映画館で観てもらえたらうれしいです。
1月公開の映画からは、この四作品を選びました。

『ALL YOU NEED IS KILL』(1月09日公開)
公式サイト:https://aynk-anime.com/
予告編:https://youtu.be/IrHiclQvFWg

s10c1032_R_00075.jpg トム・クルーズ主演でハリウッドでも映画化された桜坂洋の傑作タイムループSF小説『All You Need Is Kill』(集英社刊)を、『鉄コン筋クリート』『海獣の子供』などを手掛けたSTUDIO4℃と秋本賢一郎監督が組んでアニメ化した『ALL YOU NEED IS KILL』。
 地球外生命体の襲来によって、死んではその日の朝に戻ってしまうというタイムループに閉じ込められてしまったリタ。「君が死んだら、俺も戻るんだ」というリタの前に同じくタイムループに巻き込まれたケイジという青年が登場するのも予告編で見ることができます。リタとケイジの二人がこのループから抜け出そうとする物語になるようです。
 ここからは妄想です。予告編の中に「このままループを続けると体を乗っ取られてしまう」というセリフも聞こえてきます。それが地球外生命体の目的なのでしょうか?
 1995年に社会学者の宮台真司さんが『終わりなき日常を生きろ』という書籍を刊行しました。そして、時は経ち、グローバリズムと新自由主義に蹂躙された世界に生きる私たちは、別のフェーズに移行したと感じます。
 ゼロ年代以降に世界中のコンテンツで死んでも生き返るという「タイムループ」ものが人気になったのは、ありえたかもしれない別の可能性を私たちが欲しているからなのでしょう。何度も死んでは生き返ることになるリタとケイジの姿を見ながら、私たちはこの一回きりの死んだら終わる人生の意味を考えるきっかけになりそうです。

still_7_priority2.jpg

『ALL YOU NEED IS KILL』
2026年1月9日(金)公開
配給:ワーナー・ブラザース映画
©桜坂洋/集英社・ALL YOU NEED IS KILL製作委員会

『ウォーフェア 戦地最前線』(1月16日公開)
公式サイト:https://a24jp.com/films/warfare/
予告編:https://youtu.be/WhrvaxLq5Hw

main.jpg 『シビル・ウォー アメリカ最後の日』のアレックス・ガーランド監督とイラク戦争の帰還兵であるレイ・メンドーサの二人が監督を務めた『ウォーフェア 戦地最前線』。
 アメリカ特殊部隊の八名の小隊がイラクでアルカイダ幹部の監視と狙撃の任務についていた実話を映像化。上空を飛んでいく戦闘機、爆発音に銃撃音、砂埃が舞う視界の悪い街。アルカイダの増援が八人の元に向かってくることがわかる。そんな中、仲間の一人が負傷するが、救助が来ないことが判明。絶体絶命の状況で彼らはどうやってここから脱出するのか?
 ここからは妄想です。と言いたいところですが、「同時多発テロ」が起き、その時の大統領はジョージ・W・ブッシュでした。彼が大統領就任後には支持率は低迷していたものの、「同時多発テロ」が発生し、リーダーシップを発揮したことで驚異的な支持率を獲得しました。
 フセイン政権が大量破壊兵器を保有しているという疑惑を理由にイラクを攻撃して始まったのがイラク戦争でした。しかし、実際には保有は虚偽だったことが明らかになっています。だとしたら、なんのために多くのイラクの市民が犠牲になったのか、帰還兵たちの多くはPTSDとなり、自殺したものも多いと聞きます。この戦争は今の日本に住む僕たちにとって他人事ではありません。いつだって戦争を起こす口先だけの政治家は戦地には行かないのですから。

sub1.jpg

『ウォーフェア 戦地最前線』』
2026年1月16日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
配給:ハピネットファントム・スタジオ
© 2025 Real Time Situation LLC. All Rights Reserved.

『恋愛裁判』(1月23日公開)
公式サイト:https://renai-saiban.toho.co.jp/
予告編:https://youtu.be/tG8xrxEgub8

WEB用_恋愛裁判_メイン.jpg「第1回 LINEマンガ大賞」で銀賞を受賞、『少年ジャンプ+』でも連載され、2022年にはNetflixにて全世界配信でアニメ化されたマンガ作品を、『おそ松さん』などを手がけてきた英勉監督が実写映画化した『ロマンティック・キラー』。
 ゲームとチョコと猫が趣味で恋愛にはまったく興味のない女子高生の星野杏子(上白石萌歌)の前に、謎の魔法使いのリリが現れる。リリはなにか目的があり、杏子に恋をさせないといけないようです。魔法のせいなのか、杏子の前には様々なタイプのカッコいい男子たちがどんどん現れ始める。クールな転校生、天然幼馴染、世間知らず御曹司というメインどころの三人だけでなく、謎のSATや謎の兵士に謎の刀剣、病弱男子にタイムリープ男子など女子の妄想を具現化したような男子たちが盛りだくさんに登場するロマンティックコメディーのようです。
 ここからが妄想です。といいたいところですが、内容がすでに妄想炸裂しすぎていてびっくりしてしまいますし、もう笑ってしまいます。でも、予告編を見ても最後に杏子が誰か一人に恋するというイメージがわかないです。
 もしかすると実は主人公だと思っている杏子は実は本当の意味での主人公ではない可能性はないでしょうか。実はたくさんのイケメンたちそれぞれが主人公で、彼女を取り合うゲームだった。というオチはどうでしょうか?

WEB用_恋愛裁判_サブ01.jpg

『恋愛裁判』
2026年1月23日(金)全国劇場にてロードショー
配給:東宝
©2025「恋愛裁判」製作委員会

『ランニング・マン』(1月30日公開)
公式サイト:https://the-runningman-movie.jp/
予告編:https://youtu.be/8qYfJyMNAjM

★メイン.jpg 「ホラーの帝王」という異名をもつスティーヴン・キングが、リチャード・バックマンという別のペンネームで書いた小説を、『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ベイビー・ドライバー』のエドガー・ライト監督が映像化した『バトルランナー』。
「いよいよ"ゲーム"が始まる。今から30日間、世界中が俺を殺しにかかる。イカれてるだろ?」とカメラに向かって話しているベン(グレン・パウエル)。彼は娘の治療費のために、巨額の賞金が得られるリアリティーショー「ランニング・マン」に参加することになったようです。しかし、このゲームは出場者たちが殺人ハンターに追跡され、視聴者たちからも狙われ、捕まれば即死の「鬼ごっこ」だった。
 ここからは妄想です。「視聴者の心が動いた。君がゲームを変えたんだ」とベンに話している男性がいます。自分たちには被害が及ばないところで、このデスゲームを高みの見学をしていた視聴者たちの心をベンの必死の逃走劇が動かしていくようです。
 ラストはやはりこのゲームを最後まで逃げ切って勝者となったベンが娘を救うことができるというハッピーエンドでしょう。しかし、このゲームはその後も何度も続いていき、数年後に生き残った優勝者たちだけが出場するチャンピオン大会に出場させられるバッドエンド、続編を匂わす終わり方ではないでしょうか?

サブ.jpg

『ランニング・マン』
2026年1月30日(金)全国公開
配給:東和ピクチャーズ
©2025 Paramount Pictures. All Rights Reserved.


文/碇本学

1982年生まれ。物書き&Webサイト編集スタッフ。

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム