『ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝』──極限のアクションと復讐劇が交錯する世界
『ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝』 9月19日(金)新宿ピカデリー他全国公開
本作は大規模なヒット作というより、むしろ映画ファンがニヤリとするタイプの"拾い物映画"だ。製作を務めたのは『スパイダーマン』シリーズのサム・ライミ。彼の名がクレジットされているだけで、どんな作品なのか気になってしまう人も多いだろう。題名のインパクトからも分かる通り、スタイリッシュさよりもアクションの熱量に振り切った一本である。
舞台は文明崩壊後の荒廃した世界。狂気の女帝ヒルダ・ヴァンデルコイが支配する王朝のもと、少年〈ボーイ〉は家族を奪われ、声と聴覚までも失ってしまう。彼を突き動かしたのは、子どもの頃に夢中になったゲームの主人公の"内なる声"。謎の男シャーマンのもとで過酷な修行を重ね、沈黙の殺戮者へと成長した彼は、年に一度の"粛清の日"を前に復讐へと動き出す──。
主演のビル・スカルスガルドは、『IT/イット』シリーズや『ジョン・ウィック:コンセクエンス』とは一味違う姿を披露する。徹底した肉体改造によって鍛え上げた肉体は見事で、俊敏なアクションと存在感で観客を圧倒する。さらに彼の"内なる声"が渋みとユーモアを兼ね備え、物語の重苦しさを程よく和らげているのも魅力だ。
共演は、『ザ・レイド』や『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』でおなじみのヤヤン・ルヒアン。演じるシャーマン役としてだけでなく、アクション演出にも深く関わっているとされ、結果として生み出された戦闘シーンはどこを切り取っても迫力満点。R15+指定もうなずける過激さだが、アクション映画好きには間違いなく刺さる内容だろう。
そして、忘れてはいけないのがストーリーの仕掛けだ。単なる復讐劇に終わらず、終盤には観客を驚かせる展開が用意されている。すべてのピースがつながった瞬間、混沌としていた物語が一直線に見通せる感覚は、本作ならではの快感だ。アクションと物語、両方の満足感を味わえる作品に仕上がっている。
(文/杉本結)
『ボーイ・キルズ・ワールド:爆拳壊界流転掌列伝』
9月19日(金)新宿ピカデリー他全国公開
監督・脚本: モーリッツ・モール
出演: ビル・スカルスガルド、ジェシカ・ローテ、ミシェル・ドッカリー、ブレット・ゲルマン、イザイア・ムスタファ、ヤヤン・ルヒアン
配給:AMGエンタテインメント
R15+
原題:Boy kills world
2023/アメリカ/111分(予定)
公式サイト:https://boykillsworld.jp
予告編:https://youtu.be/5wdek8pgWpE
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