もやもやレビュー

最後に笑い合える友がいる幸せ。60年の友情を描く感動作『最後のピクニック』

『最後のピクニック』 9/12(金) 新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー

今回紹介する作品は、60年来の友情が描かれている。学生時代から本音を言い合えるような友達と、60年という歳月変わらぬ関係でいられる登場人物たちがとても素敵だった。だけど、生きていれば誰でも辛い時期があり、その背景も垣間見えることでより親近感がわいた。
2024年に韓国で5年ぶりに芸術・独立映画の歴代ヒット記録を更新し、10代から80代という全年齢層の心をつかんだ、かつてない驚くべき映画が、ついに日本にもやって来る。

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大都会・ソウルに暮らすウンシムは、60年ぶりに"宝島"と呼ばれる故郷・南海へと帰り、親友のグムスンの元へ身を寄せる。そこでウンシムは、かつて彼女に恋をしていたテホと再会し、忘れていた記憶を一つ一つ思い出し、懐かしさに心を躍らせる。だが、ウンシムが長年この地を離れていたのには理由があった。彼女の未来を決定的に変えてしまった16歳の頃の出来事と、波乱に満ちた人生が明かされていく。そして、互いの"今の真実"を知ったウンシムとグムスンは「最後のピクニック」に出かけ、「生まれ変わってもあなたの友達になる」と誓う──。

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主演のベテラン俳優であるナ・ムニとキム・ヨンオクは、本作よりずっと前からの友人で、ナが本作のオファーを受けて台本を読み、「キム・ヨンオクでなければ引き受けない」というくらいの熱量で出演を決めた。実は、最初2人の役は反対のオファーだったということを知り驚いた。というのも鑑賞したときに、これは2人ともすごくぴったりな役だと思ったからだ。役を入れ替えた判断も現場の柔軟さがうかがえ、素晴らしいと思った。

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誰にでも人生の最後はくるけれど、本作の中で、施設に入れられた友人の「息をしていてもここは家ではない」という台詞が今でも忘れられない。最後は家で迎えたいものなのかもしれない。私の父も病気になって体が辛くても、ギリギリまで家がいいと言っていた。今、施設にいる祖母も家に帰りたがっている。家で介護をするには人手が足りず、老々介護という問題に直面することになる。そういったリアルも描かれながら、話は過去と現在を行き来して展開していく。

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2人がおしゃれをして、急な坂道を手を取り合って登った先に広がる景色はとても素敵だったし、その時の2人の会話にも感動した。お互いの良いところを言い合うのだが、友達とそんなことをする機会はなかなかないからこそ、価値ある時間に思えた。少女のように微笑み合う2人はとても可愛く見えた。
どんな病気になったとしても、笑い合える友達や家族がいたらいいなと思える作品だった。ハンカチを持っての鑑賞をおすすめします。

(文/杉本結)

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『最後のピクニック』
9/12(金) 新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー

監督・脚本:キム・ヨンギュン
出演:ナ・ムニ、キム・ヨンオク、パク・クニョン 他
配給:ショウゲート

2024/韓国/114分
公式サイト:https://picnic-movie.jp
予告編:https://youtu.be/JRXZMqYcwdU
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