本年度大注目作品!『ブルータリスト』
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『ブルータリスト』 2月21(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
本作は第81回ヴェネチア国際映画祭でワールド・プレミア上映され、銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞。ゴールデングローブ賞では作品賞(ドラマ部門)、主演男優賞、監督賞と3冠を獲った。アカデミー賞では10部門にノミネートされている。今年のアカデミー賞でも注目作品の1作となっている。
主人公ラースロー・トートは、優れた才能と実績を誇るハンガリー系のユダヤ人建築家。ホロコーストから生還するも、愛する妻や姪とは引き離され、新たな生活を始めるためアメリカに移住した。著名な実業家ハリソンは、ラースローの才能を見出し、家族をアメリカに移住させることを約束し、自身にとっての夢である礼拝堂の建築を依頼。ところが、母国とは文化やルールが異なるアメリカでの仕事には数々の困難が立ちはだかる......。
本作、215分という上映時間だと知り、どのタイミングで鑑賞しに行こうか悩んだ。実は100分+インターミッション(途中休憩時間)15分+100分という215分だった。このインターミッションがあったおかげなのか長さは全く感じることはなかった。そして、最初の100分と後半の100分で主人公の環境も変わるので気持ちを入れ替えることもできてとても良い休憩時間だった。この休憩時間も実は作品の一部なのかもしれない。というのも、入場者特典として、インターミッション中に読むために作られた冊子「特製ミニブローシャ」(※非売品・限定数)も配布される。インターミッションの間に読むことで第2章の理解が深まる内容になっているということなので私も欲しいと思っている。
近年のアカデミー賞ノミネート作品はR指定作品も増加している。本作もR15+となっている。鑑賞前はホロスコートについての残酷なシーンがあるのか?と予想していたが、セクシャル的な場面でのR指定だった。ラースローは第1章で語られる10年間は奥さんに会うことも出来ずに1人で自分の信念を貫いた仕事を頑張っている。その時の孤独と第2章での妻との生活の中で彼が得たものを表現するのにとても重要なシーンだったように感じた。また、変わった視点からのカメラワークも本作の特徴だった。普段みることもない下から人を見上げるような視点が特に前半は多く、人間関係が対等でないことの比喩のようにも感じた。
題名となっている『ブルータリスト』とは何か? その元となる「ブルータリズム」は建築に関する言葉で、ついて調べてみると1950〜70年代にかけて世界中で流行した建築様式のことだった。打放しコンクリートやガラス等の素材をそのまま使った、粗野な印象の建築群を指す。「ブルータル」とは「獣のような、荒々しい」という意味。劇中で登場する建築物がまさにそのものだった。
本作は人生の終着点について考えさせられる作品だった。どんな人生を歩んだのかその人を知る上で知りたいことなのかもしれないけれど、その旅路よりも最期にみた景色がどんなものだったのか知りたいと思った。誰にだって何かを創りあげるために犠牲にするものがあるということを本作から学ぶことができた。長い作品こそ映画館という環境で集中して鑑賞してみてはいかがだろうか?
(文/杉本結)
『ブルータリスト』
2月21(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
監督・共同脚本・製作:ブラディ・コーベット
共同脚本:モナ・ファストヴォールド
出演:エイドリアン・ブロディ、フェリシティ・ジョーンズ、ガイ・ピアース、ジョー・アルウィン、ラフィー・キャシディ
配給:パルコ、ユニバーサル映画
原題:THE BRUTALIST
2024/アメリカ、イギリス、ハンガリー/215分
公式サイト:https://www.universalpictures.jp/micro/the-brutalist
予告編:https://youtu.be/ZooHE6pMFEw
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