機能不全な家族がトラウマに苛まされ続ける91分『ハロウィーン』
- 『ハロウィーン(字幕版)』
- ルーク・ジェイデン,ルーク・ジェイデン,ダイアン・ミシェル,ジェイデン・ピナー,ロブ・ザブレッキー,オーロラ・ペリノー,ジル・マリー・ジョーンズ,ドワイト・ヘンリー
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「タイトルやジャケットからするとハロウィンを題材にした作品なのだろうなぁ」と思って視聴したら全く無関係だった。この辺りから悪い予感はしていたものの、視聴者不在の映像が延々と続きよく分からないままエンドロールへ。物語の発端がハロウィンの朝である以外に何ら関連性がないという、タイトルの付け方に悪意を感じずにはいられない作品だった。ちなみに原題は『Boo!』で、こちらもこちらでハロウィンと関係が薄いのに無意味にハロウィン感を出している。
主人公のケイレブ君12歳のほか、宗教に傾倒し過ぎている父親と、そんな父親に愛想を尽かしているアル中の母親、母親と不仲で自傷行為を繰り返す姉を中心に作品が展開される。この機能不全な家族の自宅にハロウィンの朝、玄関先に置かれた謎の荷物が届くことで登場人物のそれぞれのトラウマがよみがえり各々が夢か現か分からない幻想に苛まされるという内容。
登場人物と自らに類似点があれば恐怖心も沸いてくるのだろうが、宗教心は篤くないしアル中じゃないし自傷癖もないため誰に感情移入をしたらいいのか分からない。主人公のケイレブ君は「もうだめだ、一家皆殺しにされる」と恐怖に震えながら両目に鉛筆が刺された人形を飾ったり燃える家と黒い人影が描かれた不気味な絵を描いたりと、一番怖い振る舞いをしている。作中でこの子が一番ヤバくて怖い。
各自がトラウマを想起させる悪夢を見たことで深夜に家族会議を開き、荷物をまとめて出ていこうとしたところドアが開かなくなり電源が落ちる。姉は空中に浮かぶ自分の姿を目撃し、母親は死産した部屋で自分の姿を目にする。父親に至っては少年がスプーンで目をえぐり取る。父親だけトラウマがハード過ぎる。
酷い幻覚から目覚めた父親、母親、姉は何とか家を出ようとしたところ、ガソリン缶を手にしたケイレブ君の姿が。父親は一緒に逃げようと訴えるもドアが閉じて炎が上がる。家族が叫ぶ様を遠く離れた場所から見つめるケイレブ君が現れエンドロールへ。
ハロウィンとの関連どころか主人公がなぜ家族を焼いたのかさえ分からないまま終わるので一体何を見せられているのか皆目分からない。恐怖や不気味さよりも何もかもが唐突なため困惑が先に立ち「もう少し話を整理してくれ!」という感想しか出てこない。
とっ散らかった91分を視聴させられることが一番のホラーじゃないかと悪態をつきたくなる作品だ。
(文/畑中雄也)