もやもやレビュー

ハラスメントの恐怖『ロイヤルホテル』

『ロイヤルホテル』 7月26日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開

『アシスタント』で腐った会社のルールに物申したキティ・グリーン監督が今回選んだテーマは、女性に対するハラスメント。

2016年に『HotelCoolgardie』(原題)としてドキュメンタリー映画化されたオーストラリア西部に実在する店がモデルとなっている。フィンランドの女性バックパッカー2人が住み込みで働く中でハラスメントを受ける様を記録したドキュメンタリーを監督が審査員を務めたある映画祭でこの映画を目にしてインスピレーションを受けて製作された。
『アシスタント』(19)の主演ジュリア・ガーナーや制作スタッフと再びタッグを組んで作り上げた長編劇映画の第2弾となっている。

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ハンナ(ジュリア・ガーナー)とリブ(ジェシカ・ヘンウィック)の親友2人。
旅行で訪れたオーストラリアでクレジットカードが使えないというトラブルでお金に困り、 荒れ果てた田舎にある古いパブ「ロイヤルホテル」に滞在し、 バーテンダーとしてワーキング・ホリデーをすることになる。単なる接客バイトかと思いきや、彼女たちを待ち受けていたのは、 飲んだくれの店長や荒々しい客たちが起こす パワハラやセクハラ、女性差別の連続だった。
楽観的なリブは次第に店に溶け込んでいくが、 真面目なハンナは孤立し精神的に追い込まれ、 2人の友情は徐々に崩壊していく......。

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私は、本作を鑑賞してこの監督の作風がきっと好きなんだと感じた。直接的ではないけれど、嫌だなと思っている登場人物のモヤモヤやイライラが観客にも伝わってくる。ストレスを一緒に増幅していくなんとも不思議な体験だ。この感情を観客と共有する表現がとても巧みな監督である。2作品とも完全に女性目線でストーリーは展開していく。本作、男性がみたらどのように感じるのだろう。

また、昨今ハラスメントという言葉を良く耳にするようになった。『〜ハラ』などと使われることが多いがその数なんと50以上の種類が存在する。ハラスメントを気にしていたらなにも本音で話しをすることができないようにも感じる。とても人間関係も難しくなってきた。劇中で起こるハラスメントはドラマ『不適切にもほどがある!』で出てきたような日本でいうところの昭和のおじさん達が今の若者に絡んでいるようにも見えた。

昔はその場の空気が悪くならないように耐えてやり過ごしていたことが今では許されないこととされている。そんな社会で彼女たちの怒りがマックスに達した時、衝撃のラストが待ち受けていた。

(文/杉本結)

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『ロイヤルホテル』
7月26日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開

監督・脚本:キティ・グリーン
出演:ジュリア・ガーナー、ジェシカ・ヘンウィック、トビー・ウォレス、ヒューゴ・ウィーヴィング、ハーバート・ノードラム
配給:アンプラグド

原題:The Royal Hotel
2023/オーストラリア/91分
公式サイト:https://unpfilm.com/royalhotel/
予告編:https://youtu.be/vvVx5qRtwko
© 2022 Hanna and Liv Holdings Pty. Ltd., Screen Australia, and Create NSW

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