ゲーマーがF1レーサーに！驚くべき実話『グランツーリスモ』

　プレイステーションの人気ゲーム「グランツーリスモ」シリーズ。2006年、日産のマーケティング担当者は、同ゲームのプレイヤーを本物のドライバーにするため、コンテストとアカデミーを創立するという"とんでもない"アイディアを思いつきました。そして、実際にこのプログラムでプロのF1レーサーとなったヤン・マーデンボローを描く映画『グランツーリスモ』が2023年に公開。ヤンを指導する元レーサー役に「ストレンジャー・シングス 未知の世界」などで知られるデヴィッド・ハーパー、日産のマーケティング役にオーランド・ブルーム、そして主演のヤンは『ミッドサマー』や『Saltburn』などで知られる人気若手俳優のアーチー・アデクウィが務めました。HBOの「LAST OF US」やトム・ホランド主演『アンチャーテッド』など人気ゲームが続々と映画化（またはドラマ化）されていますが、本作は、近年よくみる「ゲームのストーリーが原作の映画」ではなく、「伝記映画」というジャンルに属します。

　日産のマーケティング担当のダニーは、ゲーム「グランツーリスモ」のプレイヤーたちを実際のカーレースに出場させる「GTアカデミー」の創立に携わっています。そんな彼は、元レーシングドライバーで現在はメカニック担当のジャック・ソルターをこのプログラムに参加させるため説得。「寝室でビデオゲームをしているような子どもを、時速200kmのロケットに縛り付けるなんて、本当にできると思っているのか？」と、最初は断ったジャックですが、一方で金持ちレーサーのサポートをすることにウンザリしていました。そしてあることがキッカケとなりダニーと契約を交わします。その頃、ゲームに没頭する若者ヤンは、「GTアカデミー」への出場権をゲット。レースに勝利し、世界中から選ばれた10人のゲームプレイヤーたちと共に、ジャックの特訓を受けることに。間違えれば「リセット」を押せるゲームの世界を飛び出し、過酷なレースに挑むことになったヤン。ついにデビュー戦を迎えますが、そこでは過酷な現実が待ち受けていました。

　本作の見どころは、時速200マイルで走る車の興奮を、空撮や様々なカメラワークを使って盛り上げているところ。ゲームの世界を飛び出したヤンの体験を、スクリーンを通してそのまま私たちも体感できます。一方、ストーリーはかなり王道なもので、安易に次に起こることが予想できてしまうのが残念ポイント。ちなみにヤン本人は本作で、カーレーシングのスタントを務めています。世界中のゲーマーに夢を与えたヤンの強さなどに感銘を受けた一本でした。

（文／トキエス）