もやもやレビュー

『月刊予告編妄想かわら版』2024年4月号

『悪は存在しない』(4/26公開)より

毎月下旬頃に、翌月公開の映画を各週一本ずつ選んで、その予告編を見てラストシーンやオチを妄想していく『月刊予告編妄想かわら版』三十二回目です。
果たして妄想は当たるのか当たらないのか、それを確かめてもらうのもいいですし、予告編を見て気になったら作品があれば、映画館で観てもらえたらうれしいです。
4月公開の映画からは、この四作品を選びました。

『パスト ライブス/再会』(4月5日公開)
公式サイト:https://happinet-phantom.com/pastlives/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=DInSPpysK80

★メイン_パスト-ライブス/再会.jpg 本年度アカデミー賞の作品賞と脚本賞にノミネートされたA24制作×セリーヌ・ソン監督『パスト ライブス/再会』。
 ソウルに暮らしている少女のノラと少年のヘソンは互いに恋心を抱いていた。しかし、ノラの一家が海外移住することになり、二人は離れ離れになってしまう。12年後、24歳になった二人はニューヨークとソウルで暮らしていたが、オンラインで再会し交流をするようになった。さらに12年後、36歳になったヘソンがノラに会いにニューヨークにやってくる。しかし、ノラはアメリカ人のアーサーと結婚していた。
 ここからは妄想です。「君と一緒にいると考えてしまう。もし君がソウルを去らなかったら僕たち付き合ったかな? 結婚したのかな? 子供を持ったのかな?」とヘソンがノラに話している場面が予告編にあります。このありえたかもしれない可能性を語ることに私は親近感を感じてしまいましたが、そうではない今の現実をちゃんと受け入れて生きていくことが物語の鍵になりそうです。
 また、ノラはパートナーに「今はあなたと人生を共にしている」と話している場面もあり、ヘソンのほうが初恋を引きずっているようにも思えます。最後は今の人生を互いに生きることを選ぶ、優しい別れになるはずです。その余韻こそが大人の恋愛映画には必要なものだと思います。

サブ1.jpg

『パスト ライブス/再会』
4月5日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
配給:ハピネットファントム・スタジオ
Copyright 2022 © Twenty Years Rights LLC. All Rights Reserved

『異人たち』(4月19日公開)
公式サイト:https://www.searchlightpictures.jp/movies/allofusstrangers
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=bM-DfKTOu_c

異人たち:メイン.jpg 山田太一作の長編小説『異人たちとの夏』をアンドリュー・ヘイ監督が再映画化した『異人たち』。タワーマンションに暮らす脚本家のアダムは隣人である謎の青年と恋に落ちる。青年との会話の中でアダムが両親は「僕が12になる前に死んだ」と話し、「今両親の物語を書いてる」と言います。そしてかつて住んでいた家をアダムが訪ねるシーンが予告編にあります。
 アダムは30年前に亡くなった時の姿の両親と再会し、一緒に食事をしたり、共に時間を過ごすようです。父からは「お前が泣いてる時、居てあげなくて悪かった」と言われている場面も見ることができます。
 ここからは妄想です。大林宣彦監督『異人たちとの夏』を以前観ているのですが、舞台を日本からイギリスへ移し、主人公もゲイの男性にしたことでより2020年代の現代的な、より世界中の人たちに届くものになっているように感じます。
 もし、とんでもないラストになるとすれば、アダムが青年との恋に敗れて両親と共にあちら側に行ってしまう。それを追いかけてきた彼とあの世で結ばれるというのはどうでしょうか? まさに神話そのものですが。
 やはり、アダムが両親に別れを告げて、青年と向き合って一緒に生きていく決意をするというラストであってほしいです。

異人たち:サブ1.jpg

『異人たち』
4月19日(金)公開
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
Ⓒ2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.

『辰巳』(4月20日公開)
公式サイト:https://tatsumi-movie-2024.com/
予告編:https://youtu.be/MCylhPbF_ss?si=_CvRfUvc5wmPaOFW

『辰巳』main.jpg 『ケンとカズ』で日本映画界を震撼させた小路紘史監督の8年ぶりの最新作『辰巳』。裏社会で生きるヤクザの辰巳(遠藤雄弥)は元恋人の妹である葵(森田想)に頼まれた厄介な依頼のため、反目しながらも彼女の復讐の旅に同行することになる。始末した遺体やシャブなどの話も予告編にはあり、裏社会で生きてきた辰巳は葵に巻き込まれたことで、さらに危険な目に遭っていくようです。
「裏切ったことだろうがっ!」「裏切っただぁ、おめえいつから俺の仲間になったんだ!」という激しい言い合いや発砲される拳銃、血に染まっていく登場人物たちの慟哭のノワール。
 ここからは妄想です。と言いたいのですが、去年試写でこの作品を観ました。『ケンとカズ』に出演したカトウシンスケ、毎熊克哉、藤原季節らがその後映画やドラマで大活躍していったように、今作に出演している遠藤雄弥、森田想、佐藤五郎、倉本朋幸らもこれからいろんな作品に引っ張りだこになって、その活躍を目にするようになるはずです。
 遠藤雄弥をはじめとする出演者たちの表情は忘れられないほど強烈なインパクトを残し、同時に物語が進むにつれて作品の世界に入り込んでいって、釘付けになりました。観終わると不思議とまたあいつらに会いたくなる、そんな映画です。スクリーンでぜひ彼らに出会ってください!

『辰巳』sub1.jpg

『辰巳』
4月20日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国ロードショー
配給:インターフィルム
©小路紘史

『悪は存在しない』(4月26日公開)
公式サイト:https://aku.incline.life/
予告編:https://youtu.be/7tj7WaIDam4?si=WGiKG1lKF35O5NrK

main_still_08.jpg 第80回ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞した濱口竜介監督『悪は存在しない』。自然豊かな高原に位置する町に住んでいる巧は娘の花をおんぶして木々が茂る森の中を歩いている。美しく静かな景色が広がっているのがわかります。
「グランピング場の予定地、鹿の水場なんだ」という巧のセリフや 「汚染って言ったって、都会の水よりずっとキレイですよ」「やりすぎたらバランスが崩れる」という誰かが話しているセリフも予告編で聞くことができます。
 ここからは妄想です。予告編では多くは語られていないのですが、おそらく自然豊かな町に外部からの資本が入ってきて、環境破壊につながるグランピング場が作られようとする中で、巧たちの生活や人間関係がそれまでの穏やかなものではなくなっていってしまう展開なのでしょう。
 やはり、タイトルから考えてみると「悪」は存在しないということなら「正義」も存在しない。立場によって「悪」は「正義」でもあり、逆でもあるという意味のようにも思えてきます。
 予告編の中で銃声がしたと人々が森の方を見ている場面があるので、巧が自分たちの生活を守るために「悪」になって、グランピング場を作ろうとする人に銃を向けるかもしれません。それを鑑賞者がどう判断するかというオープンエンドではないでしょうか?

sub_still_07.jpg

『悪は存在しない』
4月26日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、K2ほか全国順次公開
配給:Incline
2023 NEOPA / Fictive


文/碇本学

1982年生まれ。物書き&Webサイト編集スタッフ。

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム