もやもやレビュー

『月刊予告編妄想かわら版』2023年12月号

映画『枯れ葉』(12月15日公開)より

毎月下旬頃に、翌月公開の映画を各週一本ずつ選んで、その予告編を見てラストシーンやオチを妄想していく『月刊予告編妄想かわら版』二十八回目です。
果たして妄想は当たるのか当たらないのか、それを確かめてもらうのもいいですし、予告編を見て気になったら作品があれば、映画館で観てもらえたらうれしいです。
12月公開の映画からは、この四作品を選びました。

『ナポレオン』(12月1日公開)
公式サイト:https://www.napoleon-movie.jp/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=5vCjxX5Ltrs

メイン_NPLN_INTL_Standee_3-Panel_RGB_ln.jpg『グラディエーター』以来の再タッグとなるホアキン・フェニックス主演×リドリー・スコット監督『ナポレオン』。フランス革命によって、マリー・アントワネットは斬首刑に処され、国内では混乱が続いていた。軍人ナポレオン(ホアキン・フェニックス)は軍事力を使って軍事独裁政権を確立する。
 ある日、ナポレオンはジョゼフィーヌ(ヴァネッサ・カービー)という後に妻となる女性と運命の出会いを果たす。その後、ナポレオンは本当の皇帝へと上りつめて最高権力者となっていく。
 妻となったジョゼフィーヌがナポレオンのことを「私無しではちっぽけな男でしかない」と言っているシーンも予告編で見ることができます。
 ここからは妄想です。と言いたいところですが、ナポレオンはやがて敗北してしまい、帝国も崩壊してしまうことを後世の私たちは知ってしまっています。今作では大いなる野望と戦略家として戦争に勝ち続けた名将としての姿と、どこか対比的な妻のジョゼフィーヌとの愛憎関係に翻弄されているような一人の男の姿が描かれているようです。
 皇帝ナポレオンの戦略家としての天才性がしっかりと描かれている歴史大作でもあり、同時に一人の男性として愛した女性との愛憎関係で揺れ動くさまを大きなスクリーンでたのしみましょう!

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『ナポレオン』
12月1日(金)公開
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

『VORTEX ヴォルテックス』(12月8日公開)
公式サイト:https://synca.jp/vortex-movie/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=wjh8WnczXnE

VORTEX:メイン写真 .jpg 鬼才ギャスパー・ノエ監督の新作『VORTEX ヴォルテックス』。作家である夫と元精神科医で認知症を患っている妻。離れて暮らす息子も心配して二人を訪ねてくるが、彼は金の無心をしているようです。
「愛しい人、お前のために私は何ができる」と妻に言っている夫も心臓に持病を抱えており、やがて当たり前だった普通の生活にも支障がでてくるようになってしまうようです。また、スプリットスクリーンの画面分割によって、夫と妻の二つの視点から物語を同時進行で描き出す作品になっていることが予告編を見るとわかります。
 ここからは妄想です。ギャスパー・ノエ監督の今まで描いてきた「暴力」や「セックス」がない代わりに、その反対にある「病」と「死」をテーマにした作品のようです。予告編には母と息子の会話で「家に連れて帰って」「ここだ」「違う」というものや、父による「ずっとここで暮らしてきた。過去も大事な物も全部ここにある」というセリフがあります。母が帰りたいのは夫婦で暮らしてきた家ではなく、生家なのでしょう。
 妻が認知症になって、記憶が損なわれていくことに夫は耐えきれなくなり、妻の首を閉めて殺して自分もすぐに心臓発作で亡くなる、という悲しいラストしか思い浮かびません。いや、それも救いに見えるように描かれているのではないでしょうか?

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『VORTEX ヴォルテックス』
12月8日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、 新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開
配給:シンカ
© 2021 RECTANGLE PRODUCTIONS - GOODFELLAS - LES CINEMAS DE LA ZONE - KNM - ARTEMIS PRODUCTIONS - SRAB FILMS - LES FILMS VELVET - KALLOUCHE CINEMA

『枯れ葉』(12月15日公開)
公式サイト:https://kareha-movie.com/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=eYpgp6ZPGQQ

枯れ葉メイン_photo_Malla_Hukkanen_c_Sputnik.jpg 前作『希望のかなた』で引退宣言をしたアキ・カウリスマキが引退撤回をして作り上げた新作『枯れ葉』。「気が滅入る」「なぜだ?」「飲みすぎる」「なぜ飲む?」「気が滅入るから」と友人と話しているホラッパは酒に溺れている。仕事を失ったアンサとホラッパがカラオケバーで運命的に出会った。しかし、お互いに好意を持ったものの、連絡先は交換しておらず、名前も知らないという有様だった。
 予告編を見ているとホラッパもアンサも共に明るいとは言えない、どこか沈んだような表情をしており、仕事の面でも私生活でも楽しいことがないまま仕方なく生きているような感じです。だからこそ、恋かもしれないと思った相手のことをずっと気にしているのでしょう。
 ここからは妄想です。タイトルが「枯れ葉」とあるように、ホラッパとアンサの二人の中年男女の人生の折り返し地点を過ぎた哀愁のようなものが全体的に感じられます。
 やはり、気が滅入っているホラッパは心の渇きから目をそらすために酒を飲み続けているのでしょう。アンサも日々の空っぽさを何かで埋めたいと思っているからこそ、二人は惹かれあったのではないでしょうか。最後はやはり再会した二人がお互いの名前を言い合って少しだけ明るい未来を感じさせる終わり方ではないでしょうか?

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『枯れ葉』
12月15日(金)よりユーロスペースほか全国ロードショー
配給:ユーロスペース
© Sputnik
Photo: Malla Hukkanen

『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』(12月22日公開)
公式サイト:https://gaga.ne.jp/talktome/
予告編:https://youtu.be/4UeN-Wsl-uQ?si=t1RJA_NCrRt43Fyj

『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』メイン.jpg『ミッドサマー』『ヘレディタリー/継承』を全米で越え、A24ホラー史上最大のヒット作となった『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』。なんと監督は双子のYouTuberであり、すでに続編も決定しているという話題作です。
 SNSで話題の「#90秒憑依チャレンジ」とは、文字が至る所に書かれている左手の木製のような物体に挑戦者が、その手を握って、「トーク・トゥ・ミー」と唱えると霊がつくというもの。挑戦者たちが「超イケる!」と興奮状態になっている姿を予告編でも見ることができます。ただ、このチャンレンジは90秒以内にその手を離さないと呼び出してしまった霊に体を乗っ取られてしまう。
 ここからは妄想です。コックリさんの新バージョンとも言える「#90秒憑依チャレンジ」ですが、SNSによって大爆発的に流行しているはずです。やはり、この作品においては一気に世界中で大ブームとなってしまって、呼び出した霊たちに支配されたものたちが最終的に人間たちを駆逐してしまうというバッドエンドではないでしょうか?
 あるいは予告編に出てくるのは片手だけなので、もう一方の手を探し出して握っているような形にすることで封印して、なんとか霊に取り憑かれたままの人を解放するみたいな終わり方もありえるかもしれません。たぶん、こっちのラストじゃないでしょうか。

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『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』
12月22日(金)より丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給:ギャガ
© 2022 Talk To Me Holdings Pty Ltd, Adelaide Film Festival, Screen Australia


文/碇本学

1982年生まれ。物書き&Webサイト編集スタッフ。

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