もやもやレビュー

グリンチが好きな人にもおすすめできる『Shall we ダンス?』

Shall we ダンス? 4K Scanning Blu-ray
『Shall we ダンス? 4K Scanning Blu-ray』
役所広司,草刈民代,竹中直人,渡辺えり子,徳井優,田口浩正,草村礼子,柄本明,周防正行
KADOKAWA / 角川書店
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何かをきっかけにとびっきりいやなヤツのなかに良心が芽生えて、だんだんとあたたかい人へ変わっていく。こういった話はあるあるで展開も読めるはずなのに、クレジットが流れるころに涙も同時に流しているのはなぜだろう。たとえばクリスマスを台無しにしようと悪さをしたみどり色の生き物が、あることをきっかけに笑顔を取り戻す『グリンチ』はわかりやすい例にある。

役所広司主演の『Shall We ダンス?』も、ある意味、グリンチ系映画ではないか。この映画のグリンチは、美人ですらっとした舞先生(草刈民代)。サラリーマンの杉山に扮する役所広司が通いはじめる教室でいやいや社交ダンスを教えている。そもそも杉山が社交ダンスをはじめるのは、停車している電車の窓から見える社交ダンス教室の大きな窓から顔を出す舞先生に一目惚れしたからである。

グリンチほどのいじわるではないものの、舞先生はいつも少しだけぷんすかしている。映画の途中までは彼女がつんつんしている理由を知る由もないが、あることをきっかけに本性を明かし、冷たいオーラを剥ぎ始める。舞先生はさておき、脇役はみんな愉快で、楽しい映画である。

舞先生が心を開きはじめる様子や、社交ダンスに縁もゆかりもない杉山がダンスにのめり込む姿を見ながら、ものごとをいい方向に動かすには、きっかけがものすごい働きをすると思った。きっかけにそもそも気づくことができるか。きっかけに対して行動できるか。それはどうやら、どれだけその変化を望んでいるかに大きくかかっているようだ。

(文/鈴木未来)

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