『月刊予告編妄想かわら版』2023年10月号
『ロストサマー』 2023年10月13日(金) より新宿武蔵野館ほか全国公開/10月6日(金)より高知県・キネマミュージアムにて先行上映
毎月下旬頃に、翌月公開の映画を各週一本ずつ選んで、その予告編を見てラストシーンやオチを妄想していく『月刊予告編妄想かわら版』二十六回目です。
果たして妄想は当たるのか当たらないのか、それを確かめてもらうのもいいですし、予告編を見て気になったら作品があれば、映画館で観てもらえたらうれしいです。
10月公開の映画からは、この四作品を選びました。
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『白鍵と黒鍵の間に』(10月06日公開)
公式サイト:https://hakkentokokken.com/
予告編:https://youtu.be/P4Mga-c6pJk
ジャズピアニスト・南博の自伝的長編エッセイを冨永昌敬監督が映像化した『白鍵と黒鍵の間に』。銀座のキャバレーで出所してきたばかりの「アイツ」(森田剛)がピアニストの博(池松壮亮)にリクエストして弾かせた「ゴッドファーザー愛のテーマ」が事件を引き起こす。
博は銀座でこの曲をリクエストしていいのは、ここで一番偉い会長(松尾貴史)だけであり、曲を弾いていいのは南(池松壮亮二役)というピアニストだけだと先輩の三木(高橋和也)から教えられる。「ゴッドファーザー愛のテーマ」の旋律によって、未来に夢見る博と夢を見失っている南という二人のピアニストの運命が大きく狂い出していくのが予告編を見るとわかります。
ここからは妄想です。予告編の中で南が「俺ボストンに行くんだ」と話しているシーンがあります。となると会長がリクエストできる「愛のテーマ」の弾き手がいなくなってしまいます。博が南のポジションに収まるという可能性もありそうです。
また、池松壮亮さんが一人二役で演じているということもあるので、ボストンに行こうとしている南と会長を「アイツ」が殺してしまい、博が南になり変わってボストンへ。数年後銀座に戻ってきた博に成り上がった「アイツ」が「愛のテーマ」をリクエストして終わりというラストはどうでしょうか?
『白鍵と黒鍵の間に』
10月6日(金)テアトル新宿ほか全国公開
配給:東京テアトル
Ⓒ2023 南博/小学館/「白鍵と黒鍵の間に」製作委員会
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『ロストサマー』(10月13日公開)
公式サイト:https://lostsummer-movie.com/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=99v2cXKwtEA
2018年に結成された、同い年の俳優4人(中澤梓佐・麻美・椿弓里奈・関口アナン)からなる映像制作チーム「889FILM」。彼らの初長編映画は麻美脚本・監督による『ロストサマー』。居場所がなく街を彷徨う青年のフユ(林裕太)、愛する妻を失った老人の秋(小林勝也)、夫と会話がないことで虚しさを抱える女性の春(中澤梓佐)。それぞれが失った「夏」を巡る物語のようです。
「僕は五歳の時からひとりぼっちや」「なら、どこにでもなおさら行けるやろうがね」というフユと秋の会話や、「また会ってくれますか?」とベッドの上で春がフユに言っている姿も予告編で見ることができます。
ここからは妄想です。春は夫との関係性や子供のことで家庭について悩んでいる。秋にとっての家庭はすでに過ぎ去っていてひとりぼっちを持て余している。フユはひとりぼっちと言っているように家庭に憧れを持っている。秋とフユが一緒にいるシーンが予告編で何度かあるのは、それぞれの孤独が共鳴したからこそ、年齢を越えた交流ができているように見えます。
三人にとって「失われた夏」とは誰かの体温であり、誰かと一緒にいれる居場所のように思えます。失った、手に入らない者の同士だからこそ、その一瞬繋がれて、日々を乗り越えていける。観た人にとっての「夏」を考えさせられる作品になりそうです。
『ロストサマー』
2023年10月13日(金) より新宿武蔵野館ほか全国公開/10月6日(金)より高知県・キネマミュージアムにて先行上映
企画・製作・プロデュース・配給 : 889FILM
©️映画『ロストサマー』
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『ザ・クリエイター 創造者』(10月20日公開)
公式サイト:https://www.20thcenturystudios.jp/movies/thecreator
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=SAcEwfbwnYA
『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』のギャレス・エドワーズ監督最新作『ザ・クリエイター/創造者』。舞台は2075年、その10年前に人類を守ってくれていたAIたちがロサンゼルスで核を爆発させた。そこから人類とAIのどちらが生き残るかという戦いが始まった。元特殊部隊のジョシュア(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は人類を滅ぼす兵器をAIが創り出したという情報から、その兵器を探しにいくがそこにいたのは進化型AIの少女・アルフィーだった。少女は人間のように成長する特別な存在であり、ジョシュアと行動を共にしていく。
ここからは妄想です。「欲しい物ある?」「私たちの自由」というジョシュアの仲間の女性と少女のやりとりや、「あなたは天国に行ける?」「いや、善人しか行けないんだ」「じゃあ、ふたりとも行けないね。あなたは善人じゃないし、私は人間じゃない」というアルフィーとジョシュアの会話も予告編で見ることができます。
タイトルの「創造者」とはアルフィーのことでしょう。彼女こそが「人類を滅ぼす兵器」であり、それは旧人類の歴史の終わり、彼女たちAI人類の始まりという意味かもしれません。ジョシュアが命懸けで彼女を守って死んでしまうことから、アルフィーはAIと人類が共存できるシンボルとなる決意をするラストかもしれません。
『ザ・クリエイター 創造者』
10月20日(金)公開
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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『こいびとのみつけかた』(10月27日公開)
公式サイト:http://koimitsu.com/
予告編:https://youtu.be/aL-xXHT0F8c
『まともじゃないのは君も一緒』の前田弘二監督×高田亮脚本コンビの新作『こいびとのみつけかた』。コンビニの前から等間隔に地面に置かれていた「木の葉」を辿ってやってきた園子(芋生悠)。それを置いていたのは植木屋で働くトワ(倉悠貴)だった。トワの働く植木屋の人たちは、そんな園子に驚き、変わり者のトワにぴったりな変わりの女だと話している場面も予告編で見ることができます。
親が喧嘩ばかりしていたトワはずっと雑誌の記事などを読むことで現実逃避をしてきたが、園子と恋人になったことで少しずつ変わり始める。しかし、彼女にはなにか秘密があるということが予告編で示唆されています。
ここからは妄想です。予告編には「二人にしか分からない世界を作る」とあり、園子がトワに「人はみんな一曲だけ自分の歌を持っている。だから、みんな生まれつき歌手なの」と話しているシーンがあります。
トワが作った自作の歌を園子の伴奏で歌うなど何かを二人で作るという展開はありそうです。とんでもない展開を妄想すると、園子の秘密というのは実は彼女は未来人であり、自分のことを強く想ってくれている人の願いがこもった歌でしか未来に帰れないということが明かされる。しかし、園子はトワと一緒にいる現在を選ぶというラストはどうでしょうか?
『こいびとのみつけかた』
10月27日(金)より新宿シネマカリテほか全国ロードショー
配給:東和ピクチャーズ
©JOKER FILMS INC.
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文/碇本学
1982年生まれ。物書き&Webサイト編集スタッフ。