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【映画が好きです】『A Cielo Abierto(原題)』マリアナ・アリアガ監督、サンティアゴ・アリアガ監督、女優フェデリカ・ガルシア インタビュー

『A Cielo Abierto(原題)』マリアナ・アリアガ監督(左)、女優フェデリカ・ガルシア(中央)、サンティアゴ・アリアガ監督(右)

ブラッド・ピットや役所広司などが出演した『バベル』の脚本を手がけ、『あの日、欲望の大地で』でメガホンをとったギジェルモ・アリアガ。そんな彼が若い頃に書いた脚本を、娘マリアナ・アリアガと息子サンティアゴ・アリアガが監督を務め、映画化。『A Cielo Abierto(原題)』と名付けられた本作は、父を事故で亡くし、復讐心を持った兄弟が加害者に会うために遠く離れた地を目指すというストーリーです。新進喜悦の女優フェデリカ・ガルシアを迎えた本作が、2023年9月のトロント国際映画祭でオフィシャルセレクション作品として上映されました。本記事では、マリアナ、サンティアゴ、そしてフェデリカに、撮影現場の様子やきょうだいで監督することについて伺ってきました。

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――トロントでの上映、おめでとうございます。この映画祭で作品が上映された今の心境はいかがですか。

マリアナ:私たちはこれまでトロントに来たことがなかったですから、とても興奮しています。映画が大好きな観客たちを近くで感じられる映画祭で、とても素敵な経験になっています。

サンティアゴ:この映画祭は、観客との距離がとても近いと実感しています。一般の観客たちと作品を分かち合い、顔を合わせることができるのは、とても素晴らしいことだと思います。

フェデリカ:一生忘れられない経験になりました。2人が言っていたように、劇場では、観客の存在を本当に感じられました。息を呑むような瞬間を経験しました。

――フェデリカさんに質問です。本作の脚本を読んだ時の心境はいかがでしたか。

フェデリカ:この脚本を読んだのは5、6年ほど前で、パウラというキャラクターを紹介されて、一瞬で彼女に恋に落ちました。脚本を読んで、パウラがその過程で経験したことにとても共感できました。だから脚本を読んだ時、「これは私が演じなければならないんだ」って実感しました。

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――撮影していて最も楽しかったシーンはどこでしょうか。

サンティアゴ:どのシーンも思い出です。どの部分にも自分たちの何かが描かれている感覚なので、シーンを選ぶというのは「息子を選ぶ」という感覚に近いかもしれません。例えば、最後のシーンは見るたびに感動します。

マリアナ:そうですね。全過程を通して、チャレンジの連続でしたが、とても楽しかったです。私にとっても最後のシーンはとても驚きのものだったし、感動しました。彼らはとても素晴らしい仕事をしてくれました。その瞬間は、彼らがそこで作り上げたもの客観視して、ただただ賞賛するというそんな気分でした。

フェデリカ:私にとっても全てが楽しかったです。特に車で一日中ドライブするシーンがあるのですが、私はそれまで一度も車を運転したことがなくて......だから映画の前に講習を受けました。運転するのはとても緊張しました。私のキャラクターが車を降りてセーターを拾って車に戻り、ドアを閉めて思いっきり加速させるシーンがあって、そのシーンが一番衝撃的でした。「よし、やれることをやるんだ」と考えた瞬間でした。

――マリアナさんとサンティアゴさんはきょうだいで監督をされて、これが初の長編作デビューとのことですが、きょうだいならではの苦労や、逆に良かったことなどはありますか。

マリアナ:私たちは共に育って、家の中で問題があったらいつも一緒に解決してきました。もし一緒に協力して問題を解決しなかったら、親から叱られていたんです。どのように絆を築いていくかを学びながら育ってきたので、それが仕事にも役に立っています。

サンティアゴ:この映画を撮影する前も2人でよく話し合いました。このストーリーが伝えたいビジョンを統一するためにね。

マリアナ:監督業っていうのは、とても孤独になり得る仕事です。だからサンティアゴがいて私はラッキーでした。これはある種の特権ですね。きっと彼がいなければ、私は監督になれなかったと思います。だからとても幸運に感じています。

サンティアゴ:私たちは、父が映画の仕事をしていた関係で、よく子どもの頃に撮影現場に行っていました。映画業界で働き、あるプロジェクトから別のプロジェクトへと移る人々にとって、撮影現場は「ホーム」でもある。スタッフたちは家族なのです。それを見てきたから、私たちにとっても最も大切なのは家族の延長線上のようなコミュニティを築き、誰に対しても敬意を払うことでした。

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――日本の作品で影響を受けたものはありますか。

サンティアゴ:もちろんです。『ドラゴンボール』や『ポケットモンスター』など、日本の作品と一緒に育ってきました。アニメの世界は、私たちの子ども時代にとても大きな影響がありました。

フェデリカ:私は15歳の時に見て感激した作品があります。とても美しい作品でタイトルは『聲の形』。あの世界にとても惹き込まれました。でも、最初に見たアニメは『デスノート』。そこからYouTubeなどでたくさんのクリップを見るようになりました。アニメは、本当に美しい芸術だと思います。

マリアナ:私たちの映画は90年代を舞台にしているのですが、私たちもこの映画で描かれているように、一台のテレビをシェアして見ることが多かったです。その頃は、携帯電話もなかったですし、ストリーミングサービスもなかったですから。家で一台のテレビをシェアして番組を見る時代でした。私の場合は、サンティアゴが言ったように『ドラゴンボール』の他にも『美少女戦士セーラームーン』などにも影響を受けました。

――最後に、観客にこの作品からどんなメッセージを受け取って欲しいですか。

サンティアゴ:きっと共感できる部分が探せる作品になっていると思います。

マリアナ:誰もが自分なりに考察し、共感したものをそのまま受け止めてくれることを願っています。私にとっては悲しみや痛みについての物語です。なので、感情的に何か共感できるものがいいなと思っています。

フェデリカ:この映画から「OKじゃなくていい」「人間味があっていい」と感じ取ってくれることを願っています。悲しみというのは人間であることの大きな部分です。時には助けを求めてもいい。自分の中の本当に壊れてしまった部分を癒すために、他人を必要としていいのだということが伝わればと思います。

(取材・文・写真/齋藤彩加)

Image Credit : Courtesy of TIFF

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