小さな不調が積み重なる前に...... イギリス発"一生使えるメンタルケア"ガイド
- 『一番大切なのに誰も教えてくれない メンタルマネジメント大全』
- ジュリー・スミス,野中 香方子
- 河出書房新社
- 2,002円(税込)
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今でこそカウンセリングやセラピーは日本でもメジャーになりましたが、日々のメンタルケアを自分でおこなうことができれば理想的です。皆さんにとっての「心の健康を保つためのツールがぎっしり詰め込まれた『一生使える道具箱』」となってくれるのが、イギリスの心理学者・臨床心理士ジュリー・スミス氏が著した『一番大切なのに誰も教えてくれない メンタルマネジメント大全』です。同書には、スミス氏がこれまで学んできたことの中から得た、価値ある知識や実践的なテクニックが網羅されています。
各章で取り上げられているのは「気分が落ち込むとき」「やる気が出ないとき」「辛い感情にとらわれているとき」「大切なものを失ったとき」「自信をなくしているとき」「不安を感じているとき」「ストレスを感じているとき」「心が満たされないとき」という8つのテーマ。人それぞれ悩みの種は千差万別ですが、抱えている感情はこの中のどれかに当てはまるのではないでしょうか。読者はそのときどきに応じて必要なページを開き、有益なツールを見つけられるはずです。
たとえば、気分が落ち込むとき。スミス氏は「感情は身体の状態、思考、行動と密接に絡みあっている」「それらの要素は、自分で変えることができる。脳と体と環境の間では常にフィードバックが起きているので、それを利用して感情に影響を与えることができる」(同書より)と言います。同書ではそのツールとして、落ち込みの原因を知る「クロスセクション分析」や注意の方向を選ぶ「感謝の書き出し」などが用意されており、自分で書き込んで状態を整理できます。
さらに、最近話題の「マインドフルネス」についても「思考の観察方法を練習し、こころの筋肉を強化するための素晴らしいツール」(同書より)として、その具体的な方法を紹介しています。そして、意外にもというべきか、やはりというべきか、「基本的なことが、実はすごく大切」なのだそう。運動、睡眠、栄養、日課(ルーティン)、人とのつながりは、落ち込んだときに最初に手放してしまいがちですが、「苦境に陥ったとき、それは防御策となってわたしたちを支え、わたしたちが倒れたら、引っぱり起してくれる」(同書より)ものとして、こうした日常生活の重要性を説きます。気分が落ち込む日は誰にでもおとずれるものですが、こうしたメンタルマネジメント術を知っているのと知っていないのとでは、回復力にも大きな違いがありそうです。
とにかく同書は科学的な裏付けに基づき、すぐに実践できるセルフケア法が紹介されている点が魅力です。自分の心の働きを理解し、それを健全にコントロールする方法を身につけることができる実践書となっています。オンラインでの発信やカウンセリングが人気を博し、300万以上のSNSフォロワーを持つことでも知られるスミス氏。興味を持った方は、まずは彼女の「Instagram(@drjulie)やYouTube(@DrJulie)をチェックしてみるのもおすすめです。
[文・鷺ノ宮やよい]