【映画が好きです】『A Cielo Abierto(原題)』脚本家ギジェルモ・アリアガ
トロント国際映画祭にて上映された映画『A Cielo Abierto(原題)』より
『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』でカンヌ国際映画祭最優脚本賞を受賞し、『バベル』でアカデミー賞にノミネートされた著名な脚本家、ギジェルモ・アリアガ。そんな彼の娘マリアナ・アリアガと息子サンティアゴ・アリアガが長編監督デビューを飾る作品『A Cielo Abierto(原題)』が、2023年9月、トロント国際映画祭にて上映されました。ギジェルモが書き上げた脚本を子どもたちが監督する......家族で一緒に作り上げた本作についてお伺いしてきました。
――まず、この脚本はどのようなところからインスパイアを受けたのでしょうか。
私が若い頃に交通事故を経験しました。後部座席で寝ている時に崖から落ちて、10メートルほど落下した後に転がり始めたんです。私は交通事故を題材にした映画をそこからたくさん書いてきました。『A Cielo Abierto』は36歳の時に初めて書いた脚本でした。
――娘さんと息子さんと一緒に映画作りをすることになった経緯はなんでしょう。
この映画の権利を取り戻したのですが、私がタイプライターで書いたオリジナルの脚本は見当たらなかったんです。でも息子のサンティアゴが、古い箱の中をあさっていて、それを見つけてくれました。彼はマリアナのところに行って「これを監督してみないか」と提案したのです。すると彼女はイエスと答え、私に対して「この作品をずっと監督してみたかった」と言ってきました。この作品を監督していいか聞かれたから、「もちろんいいよ」と答えました。私は今、彼らがこの映画の監督になったことをとても誇りに思っています。
本作の監督を務めたマリアナ・アリアガ(左)とサンティアゴ・アリアガ(右)。写真中央は主演のフェデリカ・ガルシア
――娘さんと息子さんに何かアドバイスをしましたか。
私はプロデューサーとしても脚本家としても、彼らと一緒に仕事をすることは大好きです。彼らのためにまた何か書こうと思うし、今後もコラボレーションしたいと思っています。私の子どもだということはさておき、彼らはとても才能がある。今、彼らがトロントにいるのもそれが理由です。この映画祭にいることは簡単なことではないです。でも今、いくつかの映画祭から声がかかっています。東京国際映画祭も彼らを招待してくれることを願っています。
――撮影現場の雰囲気はいかがでしたか。
私はプロデューサーだったので、毎日現場に行きました。子どもたちがいい人間でいられることが重要でした。彼らはクルーにとても敬意を払っていて、全員の名前を知っていました。そしてクルーの一人一人を、自分のために働いてくれる人ではなく、協力者であるという考えを持っていました。
――出来上がった作品を見た時の心境はいかがでしたか。
この映画は、私が描こうとしていたものにとても似ています。彼らは私と同じセンスを持っているし、私と同じ人間的価値観を持っています。なので、私が書いたものよりもいい作品に仕上げてくれました。
――ギジェルモさんが影響を受けた映画監督や作品はなんでしょうか。
フランシス・フォード・コッポラの影響は大きいと思います。『ゴッドファーザー』シリーズはもちろん『地獄の黙示録』からはとても重要な影響を受けています。例えば『ゴッドファーザー』の1作目と2作目は傑作です。食卓のディティールやスーツの着こなし、髪型、靴まで全てが完璧です。多くのエネルギーと才能があるからこそ、このような深みのある映画を作ることができるのだと思いました。
(取材・文・写真/齋藤彩加)
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