もやもやレビュー

4時間2万円の家族ごっこ『レンタル×ファミリー』

『レンタル×ファミリー』 6月10日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国ロードショー

家族レンタルサービスなどを展開する石井裕一の著書『人間レンタル屋』を実写映画化した本作。
オープニングで赤ん坊の泣き声が大音量で泣き止まない。その中でDVする夫とそれに耐える妻という最高にストレスフルな状況にあえて観客をもっていく。その演出が憎らしいほど上手く、今後の展開がどうなるんだろう?と観客の心をそこで掴んでいる。
そこから、父親不在の家に突如現れたのは母親が雇った嘘の父親。数年にわたり適切な頻度でひょっこりと顔を出す父親を演じているのが、代行業者の三上だった。

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そういえば、代行業者を雇ってリア充を体験する人がいるという話題をテレビで見たことがあった。それは劇中にも登場する、知らない人達(代行業者の人)が友達のふりをしてお誕生日会を開いてくれるといったような内容だった。その楽しそうな様子をSNSにアップすればリア充の完成である。

本当に必要で人間レンタルを利用する人がいる。そうして足りない部分を埋めることを欲している人がいて、埋めるお手伝いができたらという人もいる。理解はできたけれど、その中に愛情は感じられない。どこか寂しい関係だと思ってしまうのは確かだ。

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何人もの家族の父親を演じる三上。そんな三上自身の心安らげる場所はどこなのか。当たり障りのないことを言っていたけれど、結局のところよくわからなかった。それでも三上を必要とする人は後を経たないという事実も、寂しい気持ちにさせられた。

3組に1組は離婚すると言われている現代、シングルの家庭は全く珍しいものではなくなってきた。だからこそ起こる問題がリアルに描かれていたと思う。これからの社会を作っていく若者は本作をどう読み解くのか、とても興味深い。

(文/杉本結)

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『レンタル×ファミリー』
6月10日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国ロードショー

監督:阪本武仁
出演:塩谷瞬、川上なな実、白石優愛
配給:Atemo

2023/日本映画/107分
公式サイト:https://rentalfamily-movie.com
予告編:https://youtu.be/ZjbbXaZo-Os
©映画『レンタル×ファミリー』製作委員会

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