もやもやレビュー

『月刊予告編妄想かわら版』2023年06月号

映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』 (6/16公開)より

毎月下旬頃に、翌月公開の映画を各週一本ずつ選んで、その予告編を見てラストシーンやオチを妄想していく『月刊予告編妄想かわら版』二十二回目です。
果たして妄想は当たるのか当たらないのか、それを確かめてもらうのもいいですし、予告編を見て気になったら作品があれば、映画館で観てもらえたらうれしいです。
06月公開の映画からは、この四作品を選びました。

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『ウーマン・トーキング 私たちの選択』(06月02日公開)
公式サイト:https://womentalking-movie.jp/
予告編:https://youtu.be/n9kd_9WRI2I

WMT_メイン.jpg 第95回アカデミー賞脚色賞受賞作『ウーマン・トーキング 私たちの選択』。2010年キリスト教一派のある小さな村で連続レイプ事件が起きる。男たちが街へ出掛けている二日間で女たちは集会を開きます。「私たちは乱暴され傷つけられた。自殺した女もいる」と訴える女性がおり、彼女たちは彼らを「赦す」か、自分たちは「闘う」のか、ここから「出ていく」かを投票することになります。
 年長のヤンツ(フランシス・マクドーマンド)は「赦さないと村を追われる」と言うものの、他の女性は「ずっと動物扱いされてきた。それらしく応えるべきよ」と話しています。女たちが帰ってきた男たちに立ち向かう姿も予告編で見ることができます。
 ここからは妄想です。と言ってもこの作品は実際にボリビアで起きた事件を元にした小説を原作としています。「過去を恨んで生きるより未来へ希望を抱きたい。これ以上暴力に耐えてはいけない」と話すオーナ(ルーニー・マーラ)の姿こそがまさにこの作品の大きなメッセージではないでしょうか。
 MeToo運動が世界中に広がったのはハリウッドの大物Pであるハーヴェイ・ワインスタイン事件でした。自分たちとこれからの子供たちの尊厳を守るための選択をした彼女の姿を描くことは、今映画業界にいる人たちからの一つの返答でしょう。目を背けないために劇場で観ようと思います。あなたはどうですか?

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『ウーマン・トーキング 私たちの選択』
6月2日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、渋谷ホワイトシネクイント他全国公開
配給:パルコ/ユニバーサル映画
Ⓒ2022 Orion Releasing LLC. All rights reserved.

『水は海に向かって流れる』(06月09日公開)
公式サイト:https://happinet-phantom.com/mizuumi-movie/
予告編:https://youtu.be/965gkAoyeVQ

★メイン.jpg 田島列島の傑作漫画を前田哲監督が映像化した『水は海に向かって流れる』。高校生の直達(大西利空)は通学のために叔父の茂道が住むシェアハウスに居候することになった。そこには曲者揃いの住人たちがおり、その中にはいつも不機嫌な10歳年上の榊さん(広瀬すず)がいた。
 直達は榊さんが笑わなくなった理由を一緒に過ごしていく中で気になり、知りたいと思うようになっていくようです。同居人で年長者の成瀬は「千紗ちゃんは16歳のまま時間が止まっているんだよ」と語り、榊が今の直達の年齢の時に何かがあったのを示唆するようなセリフを言っているのも予告編で見ることができます。
 ここからは妄想です。と言いたいのですが原作漫画がめちゃくちゃ大好きでした。いつか映像化されるに違いないと思っていたので、この映画は非常に楽しみです。榊役が広瀬すずさんと最初に聞いた時は自分の描いていたイメージが違う、もっと大人な女性のほうがいいではないかと思ったのですが、予告編を見るとかなりしっくりときました。
 原作通りであれば、榊が恋愛をしなくなった理由には直達も実は関わっているのですが、ここでは書きません。ただ16歳で時間が止まっている榊が今16歳の直達と向き合うことで、10年に及ぶ過去からの呪縛が解かれていきます。そうこれは祝福の物語なのです。原作通りであればですが...。

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『水は海に向かって流れる』
6月9日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2023映画「水は海に向かって流れる」製作委員会 ©田島列島/講談社

『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』(06月16日公開)
公式サイト:https://www.spider-verse.jp/
予告編:https://youtu.be/Zlo5VgoHes8

main.jpg 世界中で大ヒットしたアニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース』の続編『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』。前作でピーター・パーカー亡き後にスパイダーマンとなった高校生のマイルスは、共に戦ったグウェンと再会したことで様々なバースから選び抜かれたスパイダーマンたちが集うマルチバースへ辿り着きます。
 スパイダーマンの哀しき定め、それは「愛する一人を救う」か、「世界を救う」かを選ばなければないということ。マイルスはそのどちらかを選ばされそうになり、「僕は両方救える」と答える姿も予告編で見れます。
 ここからは妄想です。「運命なんてブッ潰す!」とマイルスが叫んでいるシーンも予告編にあります。「ヒーローをどう定義すればいいのか?」というのがこの20年近くヒーローものの大きなテーマとなっています。今作ではヒーローたちがいかに救われるかということがテーマなのかもしれません。
 すべてのバースのスパイダーマンたちがマイルスの敵となって戦うというのであれば、バッドエンドとしてはマイルスだけが生き残ってしまって他の可能性が失われるというものがありそうです。そして、発表されている更なる続編『スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース』に繋がるのかもしれません。そのことも考えれば、今作ではバッドエンドはありえそうです。

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『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』
6月16日(金)全国公開
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
©2023 CTMG. © & ™ 2023 MARVEL. All Rights Reserved.

『小説家の映画』(06月30日公開)
公式サイト:http://mimosafilms.com/hongsangsoo/
予告編:https://youtu.be/XCnLYpfuU7I

メイン.jpg 名匠ホン・サンスによる第72回ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞作『小説家の映画』。執筆から遠ざかった小説家のジュニ(イ・ヘヨン)と一線から退いた女優のギルス(キム・ミニ)が偶然出会って惹かれあって交流をしていく物語のようです。
「映画に出ないのはもったいないという声が」とジュニの友人男性がギルスに言っているのを聞いたジュニは「何がもったいないの? 自分のしたいことを楽しんで生きてる人を尊重すべきです」という場面を予告編で見ることができます。
 ここからは妄想です。ジュニはギルスを主役にした映画を撮りたいと言い出し、彼女もまた「斬新でいいと思いますよ」と協力する姿勢を見せているシーンが予告編にあります。それぞれのジャンルで名声を得た者同士によるコラボレーションとなる映画はおそらく完成するはずです。
 ジュニが映画を撮り終えるというところまでホン・サンスはしっかり描くのではないでしょうか。その映画のタイトルは『女優の小説』など本作のタイトルとは反転したものではないかなと想像します。最後はジュニの映画に出たギルスが女優に復帰するのではなく、映画の役どころである小説家になろうとして、ジュニに小説の書き方を教えてもらう。そのことがきっかけで彼女もまた小説を書き始めるという終わりではないでしょうか?

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『小説家の映画』
6/30(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
配給:ミモザフィルムズ
© 2022 JEONWONSA FILM CO. ALL RIGHTS RESERVED


文/碇本学

1982年生まれ。物書き&Webサイト編集スタッフ。

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