原作者がノーベル賞受賞!『あのこと』
『あのこと』 12月2日(金) よりBunkamuraル・シネマ他 全国順次ロードショー
フランス現代文学を代表する女性作家アニー・エルノーが若き日の実体験をもとにして描いた、傑作小説「事件」を映画化した本作。自らの経験をもとに、女性の"性"に焦点をあてた数多くの自伝小説を発表してきたエルノーは現在82歳。ここ数年間では毎年ノーベル賞受賞の噂が立っていたが、2022年ようやくノーベル賞受賞を果たした。そんなおめでたいニュースを抱えて本作は公開をむかえる。
今回のノーベル文学賞受賞を受け、原作本「嫉妬/事件」が本屋の棚に並んでいた。ノーベル賞選考委員会は「個人の記憶の中にあるルーツ・疎外感・集団的な抑圧を明らかにする勇気と客観的な鋭さを評価した」と、彼女でしか描くことのできない赤裸々で正直な作風が受賞に値したとコメントしている。
本作は、大学生のアンヌは貧しい労働者階級に生まれたが、飛びぬけた知性と努力で大学に進学し、未来を約束する学位にも手が届こうとしていた。ところが、大切な試験を前に予期せぬ妊娠が発覚。中絶は違法の60年代フランスで、アンヌはあらゆる解決策に挑むのだが──。
本作で描かれているのは事実。誰の味方をするわけでもなく、本当に起こった事実を淡々と過ぎゆく日々の中で着実に成長してゆく命への焦りや不安、女性の体に起こる日々の変化をリアルに描いていた。命は尊く大切だが、望まない妊娠をした時に選択肢がなかったら、女性の体にだけ負担がのしかかるのも事実。綺麗事だけではなく、自分の身体に起こるリアルが生々しく描かれていたように感じた。
妊娠することはそこにゴールはなく、むしろそこから新たな生命の始まりでもあり、出産してしまえばその子どもの人生も始まる。望まない妊娠に対しての選択肢は多いほうが良いと思う。そして、1人でも多くの男性にこの映画を通して女性の妊娠についてゆっくり考える時間にして欲しいと思った。また、避妊についても考えるきっかけになれば良いと思う作品だった。
(文/杉本結)
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『あのこと』
12月2日(金) よりBunkamuraル・シネマ他 全国順次ロードショー
監督:オードレイ・ディヴァン
原作:アニー・エルノー「事件」
出演:アナマリア・ヴァルトロメイ、サンドリーヌ・ボネール ほか
配給:ギャガ
2021/フランス/100分
公式サイト:https://gaga.ne.jp/anokoto/
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