もやもやレビュー

"映画の巨匠"に愛されるラブコメ『街の灯』

街の灯 (字幕版)
『街の灯 (字幕版)』
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 チャールズ・チャップリンが主演、脚本、監督、製作を務めた『街の灯』(1931年)。この映画は、スタンリー・キューブリックほか、オーソン・ウェルズ、アンドレイ・タルコフスキーなど"映画の巨匠"と呼ばれる映画作家たちの「永遠のお気に入り」作品として知られています。現在、筆者である私はカナダの公立大学に通っているのですが、「世界を変えた10の映画」という授業でも最初に紹介されたのがこの作品。チャップリンの存在は知っているけど、みたことがないという人にもおすすめの、笑えて泣けて、ときめき溢れる一本です。

 チャールズ・チャップリン演じる放浪者チャーリーは、街角で花を売る盲目の貧しい女性に出逢います。その女性に富豪だと勘違いされた彼は、富豪のように振る舞いながらも、盲目の女性を助けるためにお金を必死で工面しようとします。そんな中、彼は泥酔したお金持ちの男性が自殺しようとしたところを助けたことから、親しくなりますが、その彼は酔いが覚めると全くチャーリーのことを覚えておらず......。

 チャップリンがこの映画を製作していた頃、サイレント映画は終わりを告げ、トーキーの時代が到来。しかし、チャップリン自身は音の出る映画には全く興味がなかったと言われています。実際に、彼の伝記映画『チャーリー』でも、頑なにトーキー映画の導入を拒むシーンがありました。このように、時代の波や、その時の"主流"を無視して、自分が得意とする無声映画にこだわったからこそ生まれたのが、この『街の灯』。チャップリンの独特な動きで笑えるシーンが満載なのですが、そのシーンの裏側には、思わずその放浪者の恋を応援したくなるようなドラマが描かれているのです。悲劇的展開の中で見せるチャップリンならではの笑い、というものが、観客の心を鷲掴みにした秘訣なのだと思いました。「笑えて、泣ける」という映画は現在たくさんありますが、この『街の灯』がまさに原点。

 ちなみに無声映画時代、映画の音楽は、上映中に生演奏されるのが主流だったそうですが、本作は、映画制作中に録音されたそうです。映像に打楽器や弦楽器の音がシンクロしているのもポイント。

(文/トキエス)

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