もやもやレビュー

『月刊予告編妄想かわら版』2022年11月号

映画『グリーン・ナイト』(11月25日公開)より

毎月下旬頃に、翌月公開の映画を各週一本ずつ選んで、その予告編を見てラストシーンやオチを妄想していく『月刊妄想かわら版』十五回目です。
果たして妄想は当たるのか当たらないのか、それを確かめてもらうのもいいですし、予告編を見て気になったら作品があれば、映画館で観てもらえたらうれしいです。
11月公開の映画からは、この四作品を選びました。

***

『窓辺にて』(11月04日公開)
公式サイト:https://madobenite.com/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=G-EV71fM7Go

 稲垣吾郎主演×今泉力哉監督『窓辺にて』。フリーライターの市川(稲垣吾郎)は妻であり編集者の紗衣(中村ゆり)が浮気をしているのを知っていた。それを知人の有坂夫妻に告げる。だが、市川は「でも実は彼女の浮気を知ったのにまったく怒りが沸かないんだ」と話す。
「あれか、ショックすぎて思考が止まっちゃうとか、そういうこと?」と有坂から言われるが、「全然違う」と市川が答えているシーンや妻からは「私のこと好きだったことあった?」と言われているシーンなども予告編で見ることができます。
 ここからは妄想です。予告編では喫茶店で高校生作家の久保(玉城ティナ)と過ごしている市川の姿や、彼が妻の浮気相手と向き合っているシーンなどもあります。「自分のそういう感情の乏しさが、たまに怖くなるんです」という市川のセリフもあるので、妻の浮気を通じて出会った人たちと触れ合うことで、彼自身が今まで出せなかった感情を次第に出せるようになっていく物語なのかもしれません。
 ラストは妻に向かって自分の気持ちを初めて吐露する市川、それをどこかうれしく感じる紗衣。だが、二人は最終的に別れることを決める。最後は自分に感情の出し方を教えてくれた久保と喫茶店の窓辺でパフェを食べている、そんな終わり方ではないでしょうか?

『窓辺にて』
11月4日(金)より全国公開
配給:東京テアトル

『土を喰らう十二ヵ月』(11月11日公開)
公式サイト:https://tsuchiwokurau12.jp/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=f5el63UWTM8

メインA_土を喰らう十二ヵ月.jpg 作家・水上勉のエッセイを中江裕司監督が映像化、料理研究家・土井義晴が映画の料理に初めて挑んだ『土を喰らう十二ヵ月』。作家のツトム(沢田研二)は幼少期に禅寺で過ごしており、現在は畑を耕しながら信州の田舎で暮らしていた。食いしん坊の編集者で恋人の真知子(松たか子)が東京からやってくると、一緒に彼の作った料理を心から味わっている様子を予告編で見ることができます。
 ツトムには亡くなった妻がいたが、その遺骨はまだ家に置かれたままになっていて、真知子から遺骨をどうするのかと聞かれている場面もあります。
 ここからは妄想です。ツトムは四季折々の食材を食べながら、関わる人たちの関係性との中で生きるということをさらに深く考えていくのでしょう。「所詮人は一人で生まれて一人で死んでいく」とツトムが話しているシーンもありますが、それは妻を看取ったことが影響しているように思えます。この先のことを考えると一人で生きていくのは寂しくもあり、辛いと心のどこかでは思っているはずです。
「真知子、ここに住まないか」とツトムが真知子に語るシーンが予告編にあります。最後は真知子が信州に越してきて、二人が一緒に料理をしているというほのぼのとしたハッピーエンドなラストが見たいです!

サブ1_土を喰らう十二ヵ月.jpg

『土を喰らう十二ヵ月』
11月11日(金)より 新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国公開
配給:日活
©2022 『土を喰らう十二ヵ月』製作委員会

『ある男』(11月18日公開)
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/a-man/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=4bBruEnNk8k

メイン組み_fix.jpg 芥川賞作家・平野啓一郎のベストセラー小説を石川慶監督が映画化した『ある男』。谷口理枝(安藤サクラ)が三年九ヶ月一緒に過ごした夫の大祐(窪田正孝)はまったくの別人だった。亡くなった大祐のDNAから彼が本物の大祐ではないとわかり、その調査を依頼された弁護士の城戸章良(妻夫木聡)。大祐を「X=ある男」として城戸はその正体を探し始めることになる。
「なんでその人、大祐の過去を欲しがったんですかね」と言う美涼(清野菜名)や、涙を流している謎の男(仲野太賀)の姿も予告編で見ることができます。
 ここからは妄想です。予告編の感じでは、「X=ある男」が謎の男である本物の大祐と入れ替わっており、この作品の見せ所は「X」の過去や彼が他人になりすましたその理由のようです。そして、大祐だと思って一緒に暮らしてきた妻の理枝や子供たちにとって、彼がどんな人物だったのかが描かれるはずです。
 予告編では前科持ちの可能性があり、それで戸籍を交換したかのような描写のシーンもあります。ただ、「X」は困っていた大祐に同情して戸籍を交換し、彼の罪かなにかを引き受けて逃げた先で出会った理枝と暮らしていたが、本当のことを言えないままだった。そんな悲しい真実がわかるラストシーンではないでしょうか?

サブ①.jpg

『ある男』
11月18日(金)より全国公開
配給:松竹
©2022「ある男」製作委員会

『グリーン・ナイト』(11月25日公開)
公式サイト:https://transformer.co.jp/m/greenknight/
予告編:https://youtu.be/dMjyf4r2sZk

グリーン・ナイト/メイン.jpg A24×J・R・R・トールキン×デヴィッド・ロウリー監督『グリーン・ナイト』。『指輪物語』のトールキンが中世文学を現代英語に翻訳したものを映像化した本作。「お前の物語を聞きたい」「語ることが何も」「今はね。これから作るのよ」と主人公のサー・ガウェインと叔父と叔母であるアーサー王と王妃の会話があります。
 アーサーと円卓の騎士たちの前に斧を持った全身が草木のような異様な緑の騎士(グリーン・ナイト)が現れる。ガウェインが相手をしてその首を切り落としますが、その首を両手で持った緑の騎士は「1年後に会おう」と行って、馬に乗って駆けていくシーンを予告編で見ることができます。
 ここからは妄想です。「緑は欲望が残す色よ」という台詞も予告編にあります。緑の騎士を1年後に探す旅に出るガウェインにはアーサー王や円卓の騎士たちのような偉大な騎士になるという欲望があったはずです。
 最終的に緑の騎士を見つけたガウェインは再び相手を倒しますが、その体の一部の草木が伸びてきて彼の体を覆っていき、ガウェイン自体が緑の騎士になってしまう。そして、なんらかの方法で時空を超えた緑の騎士になったガウェインは過去の自分と戦うのをずっと繰り返しているというダークファンタジーなラストシーンではないでしょうか?

グリーン・ナイト/サブ1.jpg

『グリーン・ナイト』
11月25日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ ほか全国公開
配給:トランスフォーマー
©2021 Green Knight Productions LLC. All Rights Reserved


文/碇本学

1982年生まれ。物書き&Webサイト編集スタッフ。「水道橋博士のメルマ旬報」で「碇のむきだし」、「PLANETS」で「ユートピアの終焉──あだち充と戦後日本の青春」連載中です。

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