美しくも極悪。『パーフェクト・ケア』
- 『パーフェクト・ケア [DVD]』
- ロザムンド・パイク, ピーター・ディンクレイジ, エイザ・ゴンザレス, ダイアン・ウィースト, ニコラス・ローガン,J・ブレイクソン
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"とんでもない復讐映画"として話題となった『ゴーン・ガール』で印象的な演技を見せたロザムンド・パイク。彼女が主演を務め第78回ゴールデングローブ賞主演女優賞を見事に獲得した映画『パーフェクト・ケア』は、これまた彼女の"怖い"魅力がこもった一本。美しくも極悪な後見人を演じた本作は、衝撃度が高めでした。
主人公は判断力の衰えた高齢者の法定後見人として裁判所からも定評のあるマーラ・グレイソン(ロザムンド・パイク)。高齢者を守り、ケアすることに熱心に見える彼女ですが、実は医者と結託し、高齢者たちから資産を搾り取るという悪徳後見人だったのです。彼女はパートナーのフランと共に、次のターゲットを発見。彼女たちは一人暮らしで身寄りのないという金持ちの老婆ジェニファーにターゲットを絞り、緊急公聴会を開き、マーラは早速法廷後見人として任命されるのです。マーラはジェニファーを介護施設に入所させ、その間にジェニファーの財産を売却。しかし、ジェニファーの家に謎のタクシー運転手が訪ねてきたことがきっかけで、マーラは窮地に立たされていきます。
恐怖で震えが止まらない物語と、マーラのファッションのコントラストにも注目。とても煌びやかで「美しく極悪」という言葉がピッタリ。ちなみに、本作で描かれている「後見人法」はアメリカに実在しており、自分ではどうすることもできない人を見定めて、ケアを提供するという社会での重要な役割を果たしています。後見人の大半は、自分の親族のために最善を尽くしたいと願う家族ですが、本作のように"利益"のために行動している人も実際にいるそうです。
実は2017年のニューヨーカーの記事「How the Elderly Lose Their Rights」では、この映画と不気味なほどよく似たケースが詳述されているのです。老夫婦が朝食を楽しんでいると、ある日突然、法廷後見人を名乗る女性が裁判所の命令書を持ち現れ、介護付き住宅への引っ越しを告げる......。そんなことが現実でも起こっているのかと思うと、さらに本作の恐怖が倍増。日本でこのようなケースがあるのかどうかはわかりませんが、自分の愛する人が歳をとった時に、どのように守れるのか。そのようなことまで考えさせられた一本でした。
(文/トキエス)