もやもやレビュー

アンソニー・ホプキンスがアカデミー賞主演男優賞受賞!『ファーザー』

『ファーザー』 5月14日(金)全国公開

本作は第93回アカデミー賞で脚色賞、主演男優賞を受賞した。
主演男優賞を受賞したアンソニー・ホンプキンスが演じたのはアルツハイマーという病に翻弄される老人という役柄。役名もアンソニーでまさにアンソニー・ホプキンスの為に、あてがきされた台本が素晴らしい。ご本人は受賞するとは思っていなかったため、アカデミー賞の授賞式のときはイギリスの自宅で熟睡していたという。コロナウイルスの影響で出席もしていなかったようだが、カメラも回っていなかったのでアメリカでの放送は不自然な形で幕をとじることになったというある意味伝説的な回となった。このサプライズ受賞は例年なら一番最後に発表される作品賞が主演女優賞、主演男優賞を最後に残す形で発表されるというところからドラマは作られていたのだろう。アンソニー・ホプキンスは現在83歳、最高齢で主演男優賞のオスカーを手にした。

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アルツハイマー病の特徴的な症状をまるでサスペンスをみているかのような構成で次々とたたみかけてくるので見ているこちらもなにが真実でどこからが幻覚なのか混乱してくる。まさに、そのようなことが毎日のようにおこるのがこの病気であり、治療法もなく頭を悩ませるところなのだろう。

認知症という病気を客観的に見るのではなく、主観的にみることになる本作の視点は疑似的に認知症体験をする世界に入り込んだような感覚になる。この異物感のような感覚に、作品と向き合えば向き合うほどにもやもやとするだろう。他人事だといいきれない認知症というテーマだからこそ真剣になり、鑑賞後はほんの少し疲労感も抱えることになる。もしかしたらいつか自分の両親も...はたまた自分自身もという目線が疲労感の原因なのだろう。

楽しい作品とは違うけれど、病気を知るという貴重な機会をくれる作品のひとつとして殿堂入りしたのは確かだ。

(文/杉本結)

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『ファーザー』
5月14日(金)全国公開

監督・脚本:フロリアン・ゼレール
出演:アンソニー・ホプキンス、オリヴィア・コールマン、マーク・ゲイティス、イモージェン・プーツ、ルーファス・シーウェル、オリヴィア・ウィリアムズ
配給:ショウゲート

原題:THE FATHER
2020/イギリス・フランス/97分
公式サイト:https://thefather.jp/
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