もやもやレビュー

地球の裏側で学ぶ、子どもたちの風景『世界の果ての通学路』

世界の果ての通学路 [DVD]
『世界の果ての通学路 [DVD]』
ジャクソン・サイコン,サロメ・サイコン,サミュエル・J・エスター,ザヒラ・バディ,カルロス・ヤネズ,パスカル・プリッソン
KADOKAWA / 角川書店
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こんな時世でも四季は一巡し、新しい春がやってきた(そして時すでに、夏に近づいてきているのだが)。そこここに、黄色い頭がタンポポのように咲きこぼれている。おろしたての帽子とランドセル、ギクシャクとした姿勢が、紛れもない新一年生であることを物語る。小学生になった自信に満ち溢れながら、胸を張って歩く子。親の手をぎゅっと握りながら、もどかしく不安そうに歩く子。親としては、成長を喜びながらも一抹の寂しさを覚える瞬間である。

地球の裏側にも、子を心配そうに送り出す親たちがいる。『世界の果ての通学路』は、命がけで学校に通う子どもたちの通学路に密着したドキュメンタリー映画。監督は長くナショナル・ジオグラフィックでドキュメンタリーを制作したのち、ケニア・マサイ族に迫った『マサイ』(03)で劇場デビュー。2作目となったのが当作品である。

登場するのは四つの国。ケニアのジャクソンは妹を引き連れながら、15kmものサバンナを登下校する。キリンを横切り、ゾウから逃れながら命懸けで通学路を駆け抜ける。アルゼンチンでは、馬に乗って通学するカルロスがいる。モロッコのザヒラは寄宿舎暮らし。毎週末には険しいアトラス山脈を越えて、4時間かけて家と学校を行き来する生活を送っている。幼い弟たちに車椅子を押されながら学校に向かうのは、インドのサミュエル。国も気候も異なる子供たちだが、共通するのは強靭な脚。カモシカのような脚を弾ませ、嬉々として学び舎に向かう。黒板を見つめるキラキラとした笑顔に、目頭が熱くなることだろう。

(文/峰典子)

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