もやもやレビュー

本への愛が溢れる『ブックセラーズ』

『ブックセラーズ』 4月23日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

電子化が進み本の存在が少しずつ衰退している昨今。それでもページをめくってその手が止められないあの感覚は至福であり、本を読むということは自分の知らない世界を知ると同時に自分の内面と自然と向き合う作業であったりもする。同じ文章を電子で読んでも得られる情報は同じはずなのに、なぜか少し物足りないと感じるのは私だけだろうか。あの、次のページへいくために次のページにいつでもいける準備をしている指の感覚が好きだ。本屋へ買いに行かなくても読みたいと思った瞬間に買える電子書籍は優秀だけど、これからの世代にも紙の本という文化も大切な存在であると知っていて欲しい。本作では、本を収集するコレクターや希少本ディーラーが様々な角度から本への愛を語るドキュメンタリーとなっている。
『ネバーエンディングストーリー』『ナインスゲート』『運命の女』など数々の映画やドラマ作品に現れる希少本ディーラーは皆そろって老人だが、実際は本を大切にしたい若い世代がいることが力強く語られている。

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この映画の中ではNYでもセレブが集うイメージの強いアッパーイースドサイドで行われるNY古書フェアの様子がみられたり、本のオークションの様子といった貴重な時間を垣間見ることで不思議な疑似体験が出来る。

『本は読むだけのものじゃない』この言葉が劇中で一番心に残り共感した。希少本はその存在や価値に気づける人がいて初めて価値がつく。本は絵画と違って一点物であるということは少なく何冊も存在するけれど、自分の本棚の一角にいて欲しい存在としての本は確かに存在するのだ。

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美しい本が綺麗に並んでいる場所をみるだけでも心がはずむ。そんな場所は日本にも存在する。『図書館戦争』のロケ地として知られるあのぐるっと円になった図書館は水戸市立西部図書館である。他にも、北九州図書館など素敵な図書館がロケ地として使用されている。海外にもたくさん素敵な図書館があるが、遠くて行くことはなかなか難しいけれど『世界の夢の図書館』という素敵な本もあるのでおすすめだ。是非本作の鑑賞で本への愛を確かめてから好きな本のページや新しい本との出会いを楽しんで欲しい。

(文/杉本結)

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『ブックセラーズ』
4月23日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

監督:D.W.ヤング
配給・宣伝:ムヴィオラ、ミモザフィルムズ

原題:THE BOOKSELLERS
2019/アメリカ/99分
公式サイト:http://moviola.jp/booksellers/
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