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樹木希林の美しい名言が遺る『命みじかし、恋せよ乙女』

『命みじかし、恋せよ乙女』 8月16日(金)より TOHO シネマズ シャンテ他にて全国順次公開

 ドイツと日本を舞台に、一人の男が人生を取り戻す感動作『命みじかし、恋せよ乙女』。8月16日に公開される本作は、日本を代表する名女優、樹木希林の遺作となりました。メガフォンを取ったのは、ドイツで最も成功した女性監督の一人として称されるドーリス・デリエ監督。彼女は樹木希林に憧れ、自らオファーしたのだそう。感動的でどこか不思議な雰囲気ただよう作品、夏の終わりにピッタリです。

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 主人公は、酒に溺れ仕事も家族も失ってしまったカール(ゴロ・オイラー)。彼の前に突如、ユウと名乗る日本人女性(入月絢)が訪ねてきます。カールの亡き父・ルディと親交があったというユウは、かつてルディが住んでいた家を訪れたいとカールに申し出ます。そこから数日間、実家で風変わりなユウと過ごし、徐々に人生を見つめ直し始めるカール。しかし、突如ユウが姿を消してしまいます。ユウを探すため日本を訪れたカールは、神奈川県の茅ヶ崎館にたどり着きます。そこでユウの祖母(樹木希林)に出会い、驚きの事実を耳にします。

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 本作ではカールが「ありのままの自分」そして「理想の自分」に悩む姿が描かれています。しかし、忘れたい過去と向き合うことで、徐々に開放されていくのです。アイデンティティとはいったい何なのだろう。そんなシンプルで深いテーマを投げかけてくる作品。一方で、映画の後半では、「あなた生きてるんだから、幸せになんなきゃダメね」。と、温かい言葉を送る樹木希林に癒やされ、ほっこりする作品でもあります。まるで胸の奥深くのドアをコンコンっとノックされたような、不思議な感覚を味わえる美しい一本。

(文/トキエス)

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『命みじかし、恋せよ乙女』
8月16日(金)より TOHO シネマズ シャンテ他にて全国順次公開

監督・脚本:ドーリス・デリエ
出演:ゴロ・オイラー、入月絢、樹木希林
配給:ギャガ

原題:Cherry Blossoms and Demons
2019/ドイツ/117分
公式サイト:gaga.ne.jp/ino-koi
©2019 OLGA FILM GMBH, ROLIZE GMBH & CO. KG

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