もやもやレビュー

信じる者は救われ......『ウィッチ』

ウィッチ(字幕版)
『ウィッチ(字幕版)』
ロバート・エガース,ダニエル・ベーカーマン,ラース・クヌードセン,ジョディ・レドモンド,ホドリゴ・テイシェイラ,ジェイ・ヴァン・ホイ,ロバート・エガース,アニヤ・テイラー=ジョイ,ラルフ・アイネソン,ケイト・ディッキー,ハーヴィー・スクリムショウ,エリー・グレインジャー,ルーカス・ドーソン
商品を購入する
>> Amazon.co.jp

 大企業社長が陰謀論者に誘拐され、「地球侵略をやめろ、この宇宙人が」と迫られる、という内容に惹かれて話題作『ブゴニア』を鑑賞してきた。実際には陰謀論者というよりもうちょっと別種というか、陰謀論者って結局のところ......という視点もありつつも楽しんでいたのだが、ラスト近く、いくらなんでもこうはならんだろうという急激な展開があり、しかしそれって昔のSFアンソロジードラマ『ミステリーゾーン』(THE TWILIGHT ZONE)に山ほどありそうなオチなんじゃないの? と一瞬がっかり。が、そこに登場するあるモノの形状からして、もしかして陰謀論者(およびそうしたものと相性の良い方々)にとっての......みたいなことなんじゃないのかと思い、だったら『ミステリーゾーン』みたいになるのも納得、全く問題なし! と、がっかり撤回。

 で、ネタバレ回避のために「......」とした部分からの連想で思い出した映画が『ウィッチ』(2015)だ。以下もなるべくネタバレを回避しながらも、もしかしたらわかっちゃうかもしれないことを書いてしまうかもしれないので、その辺りご容赦ください。まあ両作とも拙文を無視して鑑賞いただければ問題ないのだが。

 『ウィッチ』は17世紀のアメリカ、ニューイングランドを舞台としたホラー映画。敬虔なクリスチャンの一家が事情により家族だけで荒れ地で暮らすこととなる。生活は自給自足。家族以外の交流はゼロ。だが彼らの周囲を取り囲む土地からは日夜不気味な気配が感じられ、やがてその恐怖は現実のものとなり一家を襲う。家族は疑心暗鬼に苛まれ、やがて主人公である一家の娘が災いを呼ぶ魔女なのではないかと考えるようになっていく。

 長編初監督となるロバート・エガース、映画初主演となるアニャ・テイラー=ジョイのタッグながら、その後の活躍を容易に想像させる演出力、演技力で、一家が感じているであろう緊張感や息苦しさをこちらも一緒に味わえる、というか味わいたくなくとも味わえてしまう逃げ場のなさや絶望感が画面いっぱいに充満。

 さらに恐ろしいのは、一家には確実に不幸が襲いかかっているにもかかわらず、その瞬間瞬間が映像としては映し出されないということだ。全てはレンズがよそ見をしている間、画面の外側で起こるのである。ということは、それってつまり......などと思っていると、しかし最終的に映画のラストでははっきりと、禍々しい何かが現れる。だが、それもまたおそらくは......。

 と、またも「......」と書いてしまったが、『ブゴニア』『ウィッチ』どちらも「......」にあたる部分こそが共通項かつ核心でありつつ、わかりやすくは説明してくれないしそのままの意味で受け取っても意味は通ってしまうけどしかし......という、見方を試されるような作品だろう。ながら見には向きません。

田中元画像.jpeg文/田中元(たなか・げん)
ライター、脚本家、古本屋(一部予定)。
https://about.me/gen.tanaka

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム