もやもやレビュー

追いかけて遙かなる夢を......『シークレット・スーパースター』

『シークレット・スーパースター』 8月9日(金)より全国順次ロードショー

インド映画ってなぜどの作品も外れがなく面白いのだろうか?
まず、近年のインド映画を見るときにインドの「3大カーン」が出演している作品を選べばどれもこれもヒット作ぞろいである。「3大カーン」とはシャー・ルク・カーン、サルマン・カーン、アーミル・カーンのことをいう。本作でも重要な役どころをアーミル・カーンが演じている。アーミル・カーンが出演している作品は商業的娯楽性と社会的テーマを兼ね備えている点がヒットに繋がるとも言われている。今回の『シークレット・スーパースター』は青少年の人権、女性の権利、家庭内暴力の問題について提起している。国は違えど問題となることの根源は同じなんだと感じることが出来る。

シークレット・スーパースター/サブ1.jpg

歌手を夢見る少女インシア(ザイラー・ワシーム)の父親はとても厳格で女性を軽視するタイプ。母親に暴力を振るうこともしばしばだ。そんな父親が娘の歌手の夢を応援するはずもなく、インシアは顔を隠してなんとか自分の歌声を世界中に届けたいとYouTubeにアップする。するとその歌声に反響がではじめる。こっそりと夢に近づくため、少女は音楽プロデューサーシャクティ(アーミル・カーン)に会いに行く。少女の冒険の結末は・・・?

シークレット・スーパースター/サブ2.jpg

少女インシアを演じたのは『ダンガル きっと、つよくなる』で映画デビューを果たしたザイラー・ワシーム。彼女の演技の素晴らしさは素朴な少女になりきり、近くにいそうな存在であり続けるとにあるだろう。アーミル・カーンとの再タッグがこんなにも素敵な作品になるなんて。この2人にまた会えることを楽しみに劇場に足を運んでもいいだろう。

シークレット・スーパースター/サブ3.jpg

作品を鑑賞しながら、自分を育ててくれた母親のことに想いを馳せる人も多いだろう。一人の人間を育てることの難しさ。母親は自分を育てながらどんなことを考えていたのだろうか? 時には子供の言葉に傷つく日もあったのではないか? たくさんの感情があふれてくるけれど、自分が母親という存在になればわかってくることもある。どんなことがあっても単純に子供が笑っていてくれたならばそれで幸せなのだ。そんなことをこの映画はゆっくりと、言葉や台詞ではない部分で表現し心に語りかけてくれる。

自分の夢を言葉にすることは簡単なようで簡単なことではない。家族に語るのは思春期は特に気恥ずかしい。それでも家族に話すことは大切である。それは一番の理解者であり自分の味方でいてくれる存在であるからだ。少女の追いかけた夢の結末に背中を押される人が一人でも増えて欲しい。

(文/杉本結)

***

シークレット・スーパースター/サブ4.jpg

『シークレット・スーパースター』
ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開中

監督・脚本:アドヴェイト・チャンダン
出演:ザイラー・ワシーム、メヘル・ヴィジュ/アーミル・カーン
配給:フィルムランド/カラーバード

原題:Secret Superstar
2017/インド/150分
公式サイト:http://secret-superstar.com
2019 © Secret Superstar. All rights reserverd.

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム