ブラッドリー・クーパー監督の誕生『アリー/ スター誕生』
『アリー/ スター誕生』 12月21日(金)より全国ロードショー
これからの賞レースにどれくらいノミネートされるのか注目される1本でもある『アリー/ スター誕生』は、劇場で観ることをオススメしたい1本だ。
クリント・イーストウッドの流れを継ぐ映画作家になるのではないかとも言われているブラッドリー・クーパーが初監督、主演という本作を東京国際映画祭のオープニング作品という舞台で鑑賞してきた。
ブラッドリー・クーパーは以前からずっと監督業に興味をもち時間をかけて勉強していたので、どんな作品を初監督作品に選ぶのか心待ちにしていた。『スター誕生』は以前にも映画化されている作品。普段なら鑑賞前に前作を鑑賞してから観ることが多いのだが、なにも知らない状態でみてみることにしたのが大正解!
こんなに心揺さぶられる映画だとは思わなかった。
後半はすすり泣く人続出で私もその一員となった。期待以上の出来映えに上映終了後スタンディングオーベーションで拍手喝采をしたかったが、日本の劇場ではなかなかそこまでしにくい雰囲気だったので...実際は小さく拍手をして心の中でひっそりと拍手喝采。
帰宅後に「スター誕生(1976)」を鑑賞。こちらはゴールデングローブ賞ミュージカル・コメディ部門主演女優賞・主演男優賞をとり、さらに作品賞・作曲賞・主題歌賞までをも受賞している名作だが、比べてみると本作では同じシーンでも現代人が見やすいように工夫をしていたり、間延びしているシーンをスパッと次のシーンにもっていく撮り方はイーストウッドを彷彿とさせる。また、同じ撮り方のシーンにはリスペクトをもって撮ったのであろうという意図を感じた。
そして、なんといってもこの作品を語るのに欠かせないのが唯一無二の歌姫の存在。その歌姫アリー役に抜擢されたのが世界の歌姫レディー・ガガだ。
彼女の歌やパフォーマンスの実力はファンではなくても世界中で知られている。
そんな彼女が、歌姫レディー・ガガのオーラを消して一般人としてのアリーを好演。そして、圧巻の歌声が劇中で何度も何度も聴けるのだ。同じ曲がひとつの映画の中で繰り返し長めの尺で流れるのは珍しいのかもしれない。不思議と前に同じ曲が流れていたシーンが頭の中に蘇りながら、現在の状況を受け入れていくことになる。シーンごとに心躍らされたり、切なく心を締め付けたりと感情を左右する効果が素晴らしい演出。
今後のブラッドリー・クーパー監督作品が楽しみとなる作品であった。
(文/杉本結)
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『アリー/ スター誕生』
12月21日(金)より全国ロードショー
監督:ブラッドリー・クーパー
出演:レディー・ガガ、ブラッドリー・クーパー、アンドリュー・ダイス・クレイ、サム・エリオット ほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
原題:A Star Is Born
2018/アメリカ/136分
公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/starisborn/
(c)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC