もやもやレビュー

予想の斜め上をいく"それ"の正体は...『イット・カムズ・アット・ナイト』

『イット・カムズ・アット・ナイト』 11月23日(金・祝)より新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー

本作を見る前に「92分、あなたは〈精神を保てるか〉」「極限心理スリラー」という宣伝文句にホラー映画なのであろうと思い鑑賞した。しかし、鑑賞後この映画のジャンル聞かれたときなんと答えたらよいのだろうかと悩んでしまった。

森に隠れ住む一組の家族は正体不明の"それ"からの感染を恐れて日々生活していた。水も食料も備蓄したものを切り詰めて生活する一組の家族のもとにある日突然、遠く離れたところから違う家族がやってきて共同生活をはじめることになる。ひとつの事件をきっかけに二組の家族の歯車は狂いだしていく。一体"それ"の正体はなんなのか?

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序盤から独特の世界観に翻弄され、次の展開が全く読めないということになにかストレスをあたえ続けられているような感覚に陥りながら映画を鑑賞し続けることになった。『イット・フォローズ』(2014年)の製作陣が作った新たなる"それ"という存在は感染するとされていた。

森に隠れ住む家族は父親が決めた厳格なルールを守り"それ"に感染する危険を感じたらマスクや手袋を装着し防護している。わからないなにかに感染するからこの映画が怖いのかといったらそれだけではない。どこからどうやって感染するのかさえわからない。なにも情報が無い。"それ"も確かに恐怖の対象ではあるのだが、食料がどんどん少なくなってゆき、この生活にいつ終わりがくるのか全くめどがたたないことで抱える日々の生活のストレスは他人ごとではないと、鑑賞しているうちに感じるようになってくる。自身がなにかの天災に見舞われた時のことをいつのまにか想像することになるのだ。限られた食料といつまで続くのか先の見通しが全く立たない中で、なにかわからないものに襲われて病気にもなるかもしれない。そんな時に自分の家族以外の人が困っていたら助けられますか?そう問われ続ける92分間。

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見えない恐怖とたたかいながら感じる確かにそこに存在する恐怖。予想だにしない結末を目撃し"それ"の正体を知って自分はなにを思うのか確認して欲しい。

(文/杉本結)

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『イット・カムズ・アット・ナイト』
11月23日(金・祝)より新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー

監督・脚本・共同編集:トレイ・エドワード・シュルツ
出演:ジョエル・エドガートン、クリストファー・アボット、カルメン・イジョゴ、ケルビン・ハリソン・Jr.、ライリー・キーオ ほか
配給:ギャガ・プラス

原題:It Comes at Night
2017/アメリカ/92分
公式サイト:https://gaga.ne.jp/itcomesatnight/
©2017 A24 Distribution, LLC

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