もやもやレビュー

なかなか出会えない "美しすぎるスリラー"『ビューティフル・デイ』

ビューティフル・デイ (ハヤカワ文庫NV)
『ビューティフル・デイ (ハヤカワ文庫NV)』
ジョナサン エイムズ
早川書房
626円(税込)
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 予想外の結末や、グロテスクな描写で観るものをワクワク・ゾクゾクさせてくれるスリラー。そんなスリラージャンルの作品の中で、あなたは「美しい!!」と絶賛できる作品に出会ったことはありますか? 私は先日、ヨーロッパで出会いました。昨年のカンヌで2冠を達成し、日本では今年6月1日(金)に公開される新作『ビューティフル・デイ』です。

 主人公は元FBI・元軍人のジョー(ホアキン・フェニックス)。彼は心的外傷後ストレス障害(PTSD)と鎮痛剤の依存症に悩まされていました。ジョーは年老いた母と二人暮らしで、行方不明の女児を捜す仕事をしています。ある日、仕事を終えたジョーは仕事の仲介役であるエンジェルから上司に会うよう勧められ、そこでアルバート・ヴォット上院議員の娘で行方不明のニーナの救出を依頼されます。ジョーはニーナが囚われている売春宿に侵入し、次々と愛用のハンマーで組織の人間を殺していきます。ニーナを救出し、依頼主に引き渡すためモーテルに向かったジョーですが、ニーナとジョーはそこでヴォット議員が自殺したことを知ります。

 本作の原題は "You Were Never Really Here(君は実際ここに存在していなかった)" 。PTSDを抱えながら生きるジョー、そして感情が全て欠落してしまったようなニーナ。彼らが現実世界に存在している意味を深く深く考えさせられる作品でした。そんな存在の意味をなくしてしまった二人の間に絆が芽生えたら一体どうなるのか......そこにも注目していただきたいです。しかし最大の見所は、なんといっても映像美。グロテスクなシーンでさえ「美しい!」と思えてしまう描写に開いた口が塞がりません。

 クライマックスは、喪失感が半端なく、まるで失恋したかのような胸の痛みに襲われます。しかし、胸の痛みは、エンドロールを観る頃には快感に変わっているハズ。

(文/トキエス)
※画像は原作本となります。

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