もやもやレビュー

50年前に実際にあった緊迫の死のゲーム『デトロイト』

映画『デトロイト』 全国公開中!

キャスリン・ビグロー監督待望の新作のみどころを様々な視点から紹介したい。
この作品で描かれている「デトロイト暴動」から約50年の月日がたつ。

黒人は安息の地を求めて南部から北部に位置するデトロイトへと逃げてくるも、人種差別にあってしまう。なんとも息苦しい空気感が序盤から嫌な予感を漂わせる。
このままではいつかきっとなにか起きるという予感が少しずつ近づいてくる。
そんな緊迫感を漂わせながら5日間のデトロイト暴動が始まる。暴動から3日目の夜におもちゃの銃の音がモーテルから鳴り響く。
「狙撃手による発砲」と誤認した白人警官が若者9人(7人の黒人男性と2人の白人女性)が滞在するモーテルへとやってきて悪夢の強制尋問「死のゲーム」が始まる。
手持ちカメラでリアルに細かく40分間ノンストップに描かれる「死のゲーム」。この様子は実際の生存者の証言を忠実に再現しているそうだ。

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メガホンをとったのは『ハート・ロッカー』で女性初のアカデミー賞監督賞を受賞したキャスリン・ビグロー監督。
監督の作品に共通するメッセージ性の強さに加え、今回はリアリティの追求と極限状態へおいこむサスペンスが観客をハラハラドキドキさせる。楽しい内容ではないけれど、観客を作品の世界に引き込んで映画として楽しませてくれる。

もちろん出演俳優達も魅力的。
ただの食料品店の警備員だったはずなのに事件に巻き込まれてしまうディスミュークスを演じたジョン・ボイエガは『スターウォーズ/フォースの覚醒』に抜擢されてから注目度の高い俳優の一人となった。
今作では事件前、緊迫の事件、法廷劇という3つの構成で物語は進んでいくのだが、特に法廷でのジョン・ボイエガの演技は素晴らしい。
そして「死のゲーム」の主犯格となったクラウスという警官を演じたウィル・ポールターの怪演っぷりには終始イライラせずにはいられない。
この警官の思考について考えることは、今後の人種差別問題を考える上でも大きな課題になるのかもしれない。
他にもアルジー・スミスやハンナ・マリーといった若手俳優の演技合戦が作品の緊迫感を高める。

事件から50年。トランプ政権へと移行して1年が過ぎた今だからこそ、一人一人の人間が人種差別問題について深く向き合うときがきたのかもしれない。
(文/杉本結)

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『デトロイト』
全国公開中!

監督:キャスリン・ビグロー
出演:ジョン・ボイエガ、ウィル・ポールター、アルジー・スミス、ジェイコブ・ラティモア、ジェイソン・ミッチェル
配給:ロングライド

原題:Detroit
2017/アメリカ/142分
公式サイト:http://www.longride.jp/detroit/
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