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エディ・レッドメインが、女性も憧れるほどの美しい女性にしか見えない。『リリーのすべて』

『リリーのすべて』は、2016年3月18日(金)より全国公開!

 渋谷区では今年11月から、同性カップルを結婚に相当する「パートナーシップ」として認定する制度を、全国で初めてスタートした。それに伴い、LGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア/クエスチョニング)をカミングアウトする日本人が急増しているそうで、徐々に「トランスジェンダー」という言葉や概念が社会で確立してきている。

 しかし、まったく理解されなかったであろう80年以上も前に、世界で初めて性別適合手術を受けたリリー・エルベという人物が存在する。その実話を題材に描いた小説「The Danish Girl」が映画化。リリー・エルベを演じたのはエディ・レッドメイン。"車いすの天才物理学者"スティーブン・ホーキング博士の半生を描いた『博士と彼女のセオリー』で主演を務め、英国アカデミー賞、ゴールデングローブ賞など数々の賞を受賞した、今最も注目されている俳優の一人だ。

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エディ・レッドメインが美しすぎる! トム・フーパー監督とは、『レ・ミゼラブル』(2012)に続いて2度目。

 風景画家のアイナー・ヴェイナーは、妻で肖像画家のゲルダとデンマークで充実した日々を送っていた。ある日、ゲルダに頼まれ、女性モデルの代役を務めたことがきっかけで、自分の中の女性の存在に気付く。それ以来"リリー"という女性として過ごす時間が増えていったアイナーに、困惑するゲルダ。しかし、彼を愛しているからこそ、リリーの存在を認め、協力するようになる。そして、リリーの前にひとりの産婦人科医が現れ、誰も受けたことのない未知の手術に挑むことに。

 注目すべきところは、エディ演じるリリーの美しい振る舞い。今まで、自分の中に潜んでいた女性という存在を、戸惑いながらも徐々に表に出すリリーは、むしろ本物の女性よりも輝いていて、女性らしいのだ。男としてではなく、女として生きたいという強い思いから、女性らしいしぐさを学ぶシーンは、女性である私も魅了された。その一方で、夫が夫ではなくなるという不安の中、リリーに愛情を注ぐゲルダの姿には、性別を超えた愛情を感じることができて、涙が止まらない。

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奥さん役は、『コードネーム U.N.C.L.E.』での小悪魔ぶりも話題になった、アリシア・ヴィキャンデル。

 性別違和の苦しみが痛いほど伝わる本作『リリーのすべて』は、「トランスジェンダー」や「LGBTQ」という言葉や概念が確立されつつある時代だからこそ、観るべき作品だと思う。そしてリリーのはにかんだ笑顔に魅了されること間違いなし。

(文/アヤカ)

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『リリーのすべて』
2016年3月18日(金)より全国公開!

監督:トム・フーパー

出演:エディ・レッドメイン、アリシア・ヴィキャンデル、ベン・ウィショー、アンバー・ハード、マティアス・スーナールツ 他
配給:東宝東和
R15+

原題:『The Danish Girl』
2015/イギリス・ドイツ・アメリカ合作/120分

公式サイト:http://lili-movie.jp
(c)2015 Universal Studios. All Rights Reserved.
公式サイト:lili-movie.jp

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