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モノへの執着心が時に奇跡を起こす『黄金のアデーレ 名画の帰還』

『黄金のアデーレ 名画の帰還』は、 11月27日(金)より全国公開です!

 大好きな映画の限定グッズ、愛する人からもらったアクセサリー、学生時代の写真......そのモノに思い出があればあるほど誰だって執着心は強いと思う。そんな「モノへの執着心」は時に奇跡を起こすということを教えてくれる作品『黄金のアデーレ 名画の帰還』が11月27日(金)に公開される。

 ロサンゼルスに暮らすマリア・アルトマンは小さなブティックを切り盛りする活発な82歳のおばあちゃん。ユダヤ人として波乱の人生を共にした姉・ルイーゼが亡くなり、寂しさに暮れていたマリアは新たな目標を見つける。それは、ナチスに没収された伯母の肖像画「クリムトの名画」の返還をオーストリア政府に求めるというもの。クリムトの名画は「オーストリアのモナリザ」とも称され、世界で最も高額な絵画TOP10入りするほどの、とんでもない代物。駆け出し弁護士のランディとタッグを組み「私に返してほしい」と要求するものの、もちろんオーストリア政府は真っ向から反論。第二次世界大戦中に大切なものを全て奪われたマリアは大切な思い出を取り戻すことができるのだろうか。

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主人公マリアを演じるのは、イギリスの大女優ヘレン・ミレン。

 政府を訴えるというこの仰天ストーリーは、なんと実話なのだ。1938年にナチスがオーストリアを占拠。肖像画を含む価値ある家財道具はすべてナチスに奪われてしまい、両親を置いてアメリカに亡命したマリア。必死に返還を求めた彼女は、いままで逃げてきた「過去と向き合う」という大切なことを同時に成し遂げたのだ。そんな彼女の姿からは、思い出のモノへの「執着心」が時に大切だということを学べる。

 現在の日本の社会では想像もつかない、戦争の残酷さ。平和ボケしてしまって忘れてしまいがちだが、過去にはマリアのように大切なモノをすべて突然奪われてしまった人がたくさん実在したのだ。思い入れのあるモノは大切に! そして手元にあることに感謝してみると、一層モノへの愛情が深まるのかもしれない。

(文/アヤカ)

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『黄金のアデーレ 名画の帰還』
11月27日(金)より全国公開!

監督:サイモン・カーティス
出演:ヘレン・ミレン、ライアン・レイノルズ、ダニエル・ブリュール、ケイティ・ホームズほか
配給:ギャガ

原題:『Woman in Gold』
2015/アメリカ・イギリス合作/109分

公式サイト:http://golden.gaga.ne.jp
© THE WEINSTEIN COMPANY / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ORIGIN PICTURES (WOMAN IN GOLD) LIMITED 2015

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