ヨーロッパと日本の両方で暮らし、それぞれの実情を知る著者が綴る「女性が幸せに暮らすヒント」

なぜ外国人女性は前髪を作らないのか (単行本)
『なぜ外国人女性は前髪を作らないのか (単行本)』
サンドラ・ヘフェリン
中央公論新社
1,760円(税込)
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 女性の皆さんは、周りからさまざまな「お節介の声」をかけられたことはないでしょうか。「早く結婚したほうがいいよ」「仕事ばかりしている女性は寂しいよ」などなど。けれど、それって本当に気にかけるべき意見なのでしょうか。

 『なぜ外国人女性は前髪を作らないのか』の著者サンドラ・ヘフェリンさんは、ドイツで22年間、日本で23年間生活してきた日独ハーフのコラムニストです。ヨーロッパと日本の両方でさまざまな女性と交流する中で、「女性はこうすれば必ず幸せになれる」とひとつの型にはめることはできないと思うようになったといいます。

 本書を読むと、日本とヨーロッパでは文化や習慣、考え方などに大きな違いがあり、自分がこれまで当たり前だと思っていたこともグローバルな視点で見ればけっしてそうではないと気づかされるでしょう。

 たとえば、本書のタイトルにもなっている「なぜ外国人女性は前髪を作らないのか」について。日本では前髪を作っている女性が多いですが、「ドイツを含むヨーロッパでは前髪を作っている成人女性はあまり見かけません」(本書より)とサンドラさんは言います。

 前髪を作ると顔立ちが幼い印象になります。ヨーロッパではファッションも髪型も「大人の雰囲気」を持つ女性が支持されるため、前髪を作っているのは子どもや思春期の少女ぐらいなのだそうです。成人女性でも「かわいい」が魅力のひとつとされる日本との違いがよくわかる話かもしれませんね。

 ほかにも「ヨーロッパでは、ビジネスシーンでもデートの場でも化粧をするのがマナーという考え方はない」「日本は美白が人気だが、ヨーロッパはこんがり日焼けした肌がステータス」「ヨーロッパではワキ毛はあってもアンダーヘアはゼロが主流」などが書かれており、両者の違いを知れて興味深いです。

 さらに、ファッションやヘアスタイルといった美意識だけでなく、結婚や子作り&育児、男女関係などにも話題は広がります。なぜヨーロッパではセックスレスの夫婦が少ないのか、「子供が欲しいから、出産できない女性と離婚する」という考え方はアリなのかといった問題をはじめ、ヨーロッパと日本との性教育に関する違い、生理に対する捉え方や生理用品についての現状など、知りたくてもなかなか直接は聞きづらいような話題も満載です。

 ここで注意したいのは、どちらの国が良い悪いという見方はしないこと。日本との違いを知ることで見識を広め、自分の中に固めていた枠を取り払うのが本書の有効な活用法ではないでしょうか。サンドラさんは「今は強い意志さえあれば多様な生き方をすることは可能なのですから、『これだけは絶対にしたい』という自分の中の優先順位を大事にしてください」(本書より)と記しています。

 仕事、結婚、子育て、人生にはさまざまな選択肢がありますが、他人や社会に何を言われようと、自分が心地よいと思える空間に身を置くことが幸せ度をアップさせる秘訣。皆さんにとって本当の幸せとはなんでしょうか? すぐに答えが出なかった方は、そのヒントを見つけるために本書を読んでみるのもよいかと思います。

[文・鷺ノ宮やよい]

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