もやもやレビュー

退屈を抱きしめる列車旅 『コンパートメントNo.6』

コンパートメントNo.6
『コンパートメントNo.6』
ユホ・クオスマネン,ユホ・クオスマネン,セイディ・ハーラ,ユーリー・ボリソフ,ディナーラ・ドルカーロワ,ユリア・アウグ,リディア・コスティナ,トミ・アラタロ
商品を購入する
>> Amazon.co.jp

ロードムービーをざっくり分けるなら、「退屈なタイプ」と「退屈じゃないタイプ」がある。列車ものに絞ってみると、その差はよりハッキリしている気がする。警察や敵、人間関係、なにかから逃げ、追われるような形で列車に飛び乗る破滅的な旅もあれば、目的や行き先がぼんやりしたまま、ただ時間に揺られる旅もある。そんな主人公は旅を通じて成長をしたり、しなかったりする。つまり、我々のするリアルな旅に近い。このタイプのロードムービーの場合は、退屈であれば退屈であるほど、逆にリアルさを感じる。だって長い旅には退屈がつきものだから。

『コンパートメントNo.6』の主人公ラウラは、フィンランドからロシアに留学している女性。恋人にドタキャンされ、単身でロシアの最北端駅にヒエログラフを見にいくことに。その道のりはひたすら長く遠いもので、雪と氷の景色が果てしなく続いていく。題にある「コンパートメント」とは、仕切りで区切られた個室のこと。映画やドラマでよく見るアレだ。ラウラがコンパートメントで相席になるのは、酒好きで無愛想なロシアの男リョーハ。正直、最悪の相席だ。

沈黙の間に、窓の外を流れる白い景色や、列車のきしむ音が入り込む。その時間が積み重なり、いつの間にか忘れられない旅になっていく。

この映画は、退屈をそのまま抱きしめるタイプのロードムービーだと思う。派手な出来事はないけれど、旅の終わりには、変わったようで変わっていない二人が残っている。その曖昧さこそが、列車旅のリアルさなんじゃないだろうか。観終わったあと、ふと学生時代に鈍行列車で揺られた旅の揺れを思い出してしまった。

(文/峰典子)

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム