「〇〇警察」を味方につける!? 大島育宙が教える"自分だけの言葉"の育て方

なぜあなたの感想はふつうなのか 独自の視点で語る技術
『なぜあなたの感想はふつうなのか 独自の視点で語る技術』
大島育宙
大和書房
1,650円(税込)
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 映画やドラマを観た後に「どうだった?」と聞かれたとき、心の中にいろいろな感情はあるのに、「なんか良かった」「微妙だった」といった、ぼんやりした言葉しか出てこなかった経験がある人は、意外と多いと思います。スマホで他人の感想を手早く検索できる "感想検索病"が蔓延する今の時代、自分だけの視点や言葉で語れるようになるにはどうすればよいのでしょうか。そのためのヒントを与えてくれるのが、今回紹介する『なぜあなたの感想はふつうなのか 独自の視点で語る技術』です。

 著者は自身のYouTubeチャンネルでの映画やドラマの時評が注目を集め、テレビやポッドキャストでも活動を展開する大島育宙さん。本書では『ラストマイル』『PERFECT DAYS』『海のはじまり』などのさまざまな作品を手がかりに、大島さんが普段からおこなっている「自分の奥底にあるものに言葉で形を与えていくコツ」について公開しています。

 たとえば、第3章のタイトルにもなっているのが「自分だけの『警察』を見つけよう」というもの。ネットで普及して定着したスラングに「〇〇警察」というものがあります。「ざっくり言うと、特定のジャンルに詳しい人が、他人の発信を細かく過剰に取り締まる行為のこと」(本書より)ですが、「この『警察』はうまく飼い慣らせば、独自の感想の武器になる」と大島さんはいいます。お笑い芸人でもある大島さんが"お笑い警察"として映画『花束みたいな恋をした』を観てみると、違和感を抱いたのが、有村架純さん演じる「絹」と菅田将暉さん演じる「麦」がお笑いコンビ「天竺鼠」の単独ライブに行けなかったことを話すシーンでした。

 真のお笑い好きであれば、芸人の単独ライブをうっかり忘れることは考えにくい。さらに大島さんは、「絹」が「てんじくねずみ」ではなく「てんじゅくねずみ」と発音した点にも注目。これは「お笑いの描写が雑だからこの作品はダメ」と評価を下すのは早計で、「意図的に主人公たちを『サブカル好きに自分を見せたい人』として描いている可能性」があると指摘します。「自分だけの警察」視点で気になった箇所について、「本当にダメなのか、あるいは意図的なのか?」と見方を深めることで、感想の精度を高められるようになると大島さんは記します。

 ほかにも「独自の切り口が見つかる4段階分析」や「最強のインプット法『読書会』」など、大島さんが実践するいくつものコツが具体的に紹介されている本書。大島さんの言語化能力は東京大学法学部卒という素養に加え、こうした日々のトレーニングの賜物であることがうかがえます。作品鑑賞において自分の言葉を持ちたい、独自の視点を生み出すためのインプット術について知りたいという人は、そのためにどのような訓練をすればよいのか、ぜひ本書を参考にしてみてください。

[文・鷺ノ宮やよい]

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