【「本屋大賞2026」候補作紹介】『殺し屋の営業術』――ノルマは2週間で2億円。凄腕営業マン命がけの仕事が始まる......!

- 『殺し屋の営業術』
- 野宮 有
- 講談社
- 2,145円(税込)

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BOOKSTANDがお届けする「本屋大賞2026」ノミネート全10作の紹介。今回取り上げるのは、野宮 有(のみや・ゆう)著『殺し屋の営業術』です。
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第71回江戸川乱歩賞を選考委員の満場一致で受賞し、このたび本屋大賞にもノミネートされた『殺し屋の営業術』。本作は絶体絶命のピンチに陥った凄腕営業マンが、殺人請負会社「極東コンサルティング」の営業を引き受けるという異色のクライムミステリーです。
営業会社を渡り歩きながら、行く先々で常にトップの成績を叩き出してきた営業マン・鳥井一樹。彼は深夜に訪れたアポイント先で刺殺体を発見し、自身も背後から襲われ意識を失います。犯人は、ビジネスとして家主の殺害を請け負っていた殺し屋たち。彼らの顔を目撃してしまった鳥井は口封じのために殺されそうになりますが、頭をフル回転させ、「ここで私を殺したら、あなたは必ず後悔します」と決死の営業トークを繰り広げます。
そして殺し屋たちの今月の売り上げ目標が未達であると知った鳥井は、「私を雇いませんか? この命に代えて、あなたを救って差し上げます」と提案するのです。商談は無事成立したものの、課されたノルマはなんと2週間で2億円。失敗すれば、全員道連れで死へ直行。鳥井は無事に目標金額を達成し、生き延びることができるのでしょうか......。
営業にかけては天賦の才を持ち、契約成立のためには手段を選ばず商品を売り続けてきた鳥井。本人は天職を見つけてさぞ幸せかと思いきや、自分の人生を生きている実感が持てず、空虚さを抱えながら生きています。一生この生活が続くのかとうんざりしていたものの、皮肉なことに、自身が殺されそうになったとき、彼は生まれて初めて心の奥底にある欲望に気づくのです。
「どう足掻いても達成困難な目標を突きつけられたとき、濃密な死の気配にその身を晒されたとき、鳥井はかつてないほどの高揚に包まれている。自分は、こういう種類の生き物だったのだ」(本書より)
最初は戸惑いながらも、自身の本質に気づき、覚醒していく鳥井の姿は、本作の大きな見どころだと言えるでしょう。恐れるものがなくなった鳥井は、もはや悪魔的ですらあり、これまでの営業経験で培った人心掌握スキルは、プロの殺し屋ですら太刀打ちできないほど。最大の敵である女性エージェント・鴎木美紅とのコンゲームはスリリングな展開が続き、ページをめくる手が止まらなくなります。
かくして裏社会の怪物営業マン、爆誕。これから鳥井がメンバーたちとどのような活躍を見せるのか......は、2026年刊行予定のシリーズ第2弾『殺し屋の出世術』でお目にかかれそうです。漫画原作者やライトノベル作家としても活躍する著者による、超一級のエンターテインメント作品をお見逃しなく!
[文・鷺ノ宮やよい]
