歯の健康が人生の幸福度を決める? 大人も子どもも知っておきたい歯の真実

すぐに誰かに話したくなる! 親子で読みたい、歯のおもしろ雑学78
『すぐに誰かに話したくなる! 親子で読みたい、歯のおもしろ雑学78』
小野 義晃
游藝舎
1,650円(税込)
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 健康について意識したとき、真っ先に考えることはなんだろう。病気にならない体を作るための食事と運動、定期的な健康診断の受診、酒やタバコを控えること――。さまざまなことが思い浮かぶだろうが、真っ先に「歯」を連想する人は少ないかもしれない。毎日、それも1日数回のメンテナンスが必要な、極めて重要なものであるにもかかわらずだ。

 思い至らない理由は、歯の役割や、歯が全身の健康に影響を及ぼす事実を正しく理解していないためだ。小児歯科専門医・小野義晃氏が著した『すぐに誰かに話したくなる!親子で読みたい、歯のおもしろ雑学78』(游藝舎)は、歯についての興味と理解を深めて、その重要性を知ることができる1冊である。

 たとえば、人類の歯が他の動物の歯とは異なる特徴を持っていることを知っているだろうか。舌で歯を触ってみると、人間の歯は場所によって形が違うことがわかる。

「人間の歯には3つの種類があって、それぞれ違う役割があります。前に並んでいる切歯はハサミのように食べ物を噛み切ります。とがった犬歯はナイフのように引き裂きます。そして、奥にある臼歯は石臼のように食べ物をすりつぶします。肉食のライオンやシマウマなど、食べるものが偏っている他の動物と違って、この3種類の歯がバランスよくそろっているのは、人間や猿などごく一部の動物だけです」(本書より)

 歯ごたえのある肉や柔らかい野菜など、さまざまなものをおいしく食べられるのは、バランスよく備わった歯のおかげだ。むし歯になって歯が痛くなると食事が楽しめないどころか、しっかりと噛めないことで胃や腸に負担がかかり、消化不良を起こす可能性もある。

 歯が痛むだけでも怖いが、むし歯や歯周病のさらに恐ろしい点は、口の中の細菌が全身に影響を及ぼし、病気を引き起こしたり悪化させたりする可能性があることだろう。著者は具体例として、心筋梗塞、動脈硬化、糖尿病、誤嚥性肺炎などを挙げている。どれも命に関わる重大な病気だ。最近では、歯周病菌とアルツハイマー型認知症との関連を示す研究も報告されているという。

 歯が悪くなることで起こり得るさまざまなリスクを知れば、普段何気なくおこなっている歯磨きの重要性を実感するはずだ。では、歯磨きは1日に何回おこなうべきなのだろうか。著者は以下のように説明している。

「むし歯と歯周病を予防するためには、『毎食後3分以内の歯磨き』が推奨されています。その理由は、
・口の中の細菌が食べかす(糖分)から歯垢(プラーク)や毒素をつくり出す
・口の中が酸性になって歯を溶かし始める
からです。
ですから、答えをいえば、『1日3回、食後3分以内』が理想です」(本書より)

 とはいえ、外出先などですぐに歯を磨くのが難しいケースもある。その場合は、せめて口を水でゆすぐなどしたほうがよいとのことだ。甘いジュースを飲んだあとも同様である。また、「1日3回は難しい」という人は、朝晩2回に時間をかけ、質の高い歯磨きを心がけるべきだと記している。

「大事なことは、口の中に長時間食べかすが残った状況や細菌が増える状況をつくらないということです」(本書より)

 本書では、歯そのものに関することだけでなく、歯科医療に関わる人々についても触れられている。歯科医院にいるのは歯科医師――いわゆる「歯医者さん」だけではない。ほかにも歯科衛生士、歯科技工士、歯科助手などがいて、それぞれが協力して歯の治療にあたっている。

 興味深いのは、それぞれ「なり方」が異なる点だ。「歯科医師」になるには、大学の歯学部で6年間学び、国家試験に合格する必要がある。また、合格して歯科医師免許を取得した後は、1年以上の臨床研修が義務付けられている。

「歯科医師と医師の一番の違いは、歯科医師は診療の範囲が主に口腔内に限られていることです。
ただし、歯科医療に付随した行為であれば、全身麻酔や呼吸管理なども行うことができますし、死亡診断書を書くこともできます」(本書より)

 「歯科衛生士」になるには、高校卒業後に専門学校、短期大学、大学などの歯科衛生士養成機関(3年以上)へ進学する必要がある。そこで定められた知識と技術を習得し、国家試験に合格すると歯科衛生士の資格が得られる。女性が就くことが多い職種で、2022年末時点では男性の歯科衛生士は全国でも少数だったというのが興味深い。

 歯について知り、歯の治療に携わる人々について知れば、「歯磨き」や「歯医者さん」に対する印象も変わるはずだ。毎食後の歯磨きはもちろん、歯科医院にも定期的に通おうという気持ちになれるだろう。本書は子どもにもやさしい文章で書かれているため、タイトル通り「親子で」読んで、家族みんなで歯の健康について考えるきっかけにしてほしい。

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