「変わっていくふたり」----『佐藤さんと佐藤さん』が描くリアルな結婚と現実
『佐藤さんと佐藤さん』 11月28日(金) 全国ロードショー
日本で最も多い苗字・佐藤。いまや 7人に1人が佐藤さん と言われており、先日「このまま増え続けると、500年後の日本人は全員が佐藤さんになる」という記事を読んだ。本作は、そんな"佐藤さん同士"が付き合い、結婚し、そして変化していく姿を描いた物語だ。
活発な佐藤サチ(岸井ゆきの)と、真面目な佐藤タモツ(宮沢氷魚)。大学で出会った正反対のふたりは、なぜか気が合い、同棲を始める。5年後、弁護士を目指すタモツは司法試験に不合格。サチは彼を支えるため共に勉強し、司法試験に挑戦することに。そして、合格したのはサチだった。弁護士となったサチと、家事と育児をしながら勉強を続けるタモツ。あの頃は同じ方向を見ていたはずなのに、気づけばふたりの間に少しずつズレが生まれていく――。
この作品は、かなりリアル。日本では 結婚後3年以内に離婚する夫婦が約18〜20%。さらに、そのうち約4割が"産後2年以内に離婚"を決意しているというデータもある。
出産後に夫婦関係が悪化する現象は「産後クライシス」。育児や家事の負担が偏ることで不満が溜まりやすく、特に子どもとの接し方に慣れていない時期に起こりやすいと言われている。女性は育児で睡眠もとれず、生活が一変する。
その一方で、パートナーが出産前と同じペースで飲み会に行く。
それだけで、イライラの引き金になってしまう。
逆に、「お風呂入れに帰ってきたよ」「何かできることある?」の一言があるだけで、救われたりする。
本作では、稼ぎ手のサチが出産後すぐに復帰し、タモツが家事・育児を担う。
そんな日常の中の「トイレットペーパーがないよ」という一言が、
「それは買ってこいってこと?」
というケンカに発展する。
どちらの気持ちも痛いほどわかるシーンばかりだった。
私自身も経験した気持ちが重なり、共感の嵐だった。
現実を突きつけられるようだけど、
「自分たちはこうならないために、どうしたらいいのだろう?」
と考えるきっかけになるはず。
これから結婚・妊娠を考える すべてのカップルに観てほしい作品。
鑑賞後に、パートナーと未来について話してほしい作品だ。
(文/杉本結)
『佐藤さんと佐藤さん』
11月28日(金)全国ロードショー
監督:天野千尋
出演:岸井ゆきの、宮沢氷魚、藤原さくら、三浦獠太、田村健太郎、前原滉、山本浩司、八木亜希子、中島歩、佐々木希、田島令子、ベンガル
配給:ポニーキャニオン
2025/日本映画/114分
公式サイト:https://www.sato-sato.com
予告編:https://youtu.be/dLKooLG6qAY
©2025『佐藤さんと佐藤さん』製作委員会

