『モンテ・クリスト伯』愛と復讐が交差する、息を呑む178分
杉本結
文豪アレクサンドル・デュマによる傑作小説「巌窟王」が、新たに映画として蘇る。"復讐劇の金字塔"とも言われる物語は、ロマンス、サスペンス、アクション...ジャンルを超えて人の情念を描く"究極の人間ドラマ"。150年以上経った今でも観客の心を揺さぶる。
主演は『イヴ・サンローラン』(2014)でセザール賞主演男優賞を史上最年少で受賞したフランス映画界のスター、ピエール・ニネ。驚異的な変装術と冷静な頭脳を持つ男、エドモン・ダンテスの数奇な人生を優雅かつ繊細に演じきっている。
将来を約束された航海士ダンテスは、ある策略により無実の罪で投獄される。脱出不能とされた監獄で希望を失う日々。そんな彼の運命を変えたのは、脱獄を企てる老司祭との出会いだった。司祭から学問や教養を授かり、さらにテンプル騎士団の隠し財宝の存在を知らされる。
――そして14年後。奇跡的に脱獄したダンテスは、莫大な財宝を手に入れ、「謎の大富豪」としてパリ社交界に現れる。彼の目的はただひとつ。人生を奪った三人の男たちへの復讐だった。
ダンテスが敵に近づく手段が、とにかく巧妙。相手の行動を読み、じわじわ追い詰める様子はスリリングで、見ているこちらまで手に汗握る。
そして長い年月の中で変わってしまったもの、失われた時間。それに苦しみながらも真実を暴いていく姿が胸に迫る。
またこの映画は「ただの復讐劇」ではない。
ロマンスや人間ドラマの要素が重なり、台詞の一つひとつが深い。特に元婚約者との再会シーンは忘れられない。正体を明かさぬまま「本当の恋は一度きりだ」と語る言葉には、切なさとロマンがあった。言葉で説明しなくても、2人の間に流れる空気で感情が伝わってくる。
上映時間は178分、約3時間。
でも冗長に感じる瞬間がまったくなく、むしろ「もっと観ていたい」と思うほど夢中になれた。衣装や小物、当時の空気を再現した美術にも圧倒される。
復讐が始まる瞬間の痛快さ
胸が締め付けられるほどのロマンス
息を呑むサスペンス
ぜひ、大きなスクリーンで体験してほしい作品。
(文/杉本結)
『モンテ・クリスト伯』
11月7日(金)より TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
監督:マチュー・デラボルト、アレクサンドル・ド・ラ・パトリエール
原作:アレクサンドル・デュマ
出演:ピエール・ニネ、バスティアン・ブイヨン、アナイス・ドゥムースティエ、アナマリア・ヴァルトロメイ、ロラン・ラフィット、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、パトリック・ミル、ヴァシリ・シュナイダー、ジュリアン・ドゥ・サン・ジャン
配給:ツイン
原題:Le Comte de Monte-Cristo
2024/フランス/178分
公式サイト:https://monte-cristo.jp
予告編:https://youtu.be/F4S11QxzgJc?si=_NePwBdYaSPp4_iu
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