もやもやレビュー

『月刊予告編妄想かわら版』2025年12月号

『ボディビルダー』(12/19公開)より

毎月下旬頃に、翌月公開の映画を各週一本ずつ選んで、その予告編を見てラストシーンやオチを妄想していく『月刊予告編妄想かわら版』五十二回目です。
果たして妄想は当たるのか当たらないのか、それを確かめてもらうのもいいですし、予告編を見て気になったら作品があれば、映画館で観てもらえたらうれしいです。
11月公開の映画からは、この四作品を選びました。

『ペンギン・レッスン』(12月05日公開)
公式サイト:https://longride.jp/lineup/penguin/
予告編:https://youtu.be/69j2M38N8u0

main.jpg『フル・モンティ』のピーター・カッタネオ監督が手がけた新作は世界22ヵ国で刊行されてベストセラーになったある教師の回顧録を映画化した『ペンギン・レッスン』
 1976年、イギリス人の英語教師のトム(スティーヴ・クーガン)は旅先で美女の気を惹くために重油まみれのペンギンを助けた。しかし、女性に逃げられてしまい、海に戻そうとしてもそのペンギンはトムの元になぜか戻ってきしまう。
 人生に希望を見出せずにいたトムはアルゼンチンの名門寄宿学校に赴任することになった。「内緒にしてくれるなら、昼休みにエサやりをさせてあげよう」と教室にやってきた「サルバトール」と名付けたペンギンと生徒たちが触れ合っていく姿も予告編で見ることができます。
 ここからは妄想です。といいたいのですが、学校のプールをまっすぐに泳いでいくペンギンの姿も印象的ですし、ちょっとひねくれたトムが少しずつ人間らしく、心を開いていく姿も予告編で見ることができて、ハートウォーミングな物語のはずです。
 今、この日常や常識が壊れていく世界に怯えたり、怒りを感じている人はこの作品でトムと「サルバトール」、そして彼らと生徒たちとの交流をみるとなにかスッキリとしたり、どこか諦めないでいたいという気持ちになるのではないかと思います。僕も彼らに会いに劇場に行こうと思います!

sub01.jpg

『ペンギン・レッスン』
12月5日(金) 新宿ピカデリー、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
配給:ロングライド
© 2024 NOSTROMO PRODUCTION STUDIOS S.L; NOSTROMO PICTURES CANARIAS S.L; PENGUIN LESSONS, LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

『エディントンへようこそ』(12月12日公開)
公式サイト:https://a24jp.com/films/eddington/
予告編:https://youtu.be/6e44tIoDA_8?si=TFtHa04oh6f0LPCO

★メイン.jpg 四度目のタッグとなるA24×アリ・アスター監督の最新作『エディントンへようこそ』。
 コロナパンデミック最中の2020年、ニューメキシコの小さな町エディントン。ロックダウンされて隔離生活が続く中、「コロナはただの風邪」と疑問を抱く保安官ジョー(ホアキン・フェニックス)とコロナ政策を徹底的に行っている野心家の現市長テッド(ペドロ・パスカル)が対立し、ジョーが市長選に立候補することになるようです。
「みんなに監視されてる!」とカルト集団の教祖の扇動に心を奪われて陰謀論にハマっていくジョーの妻ルイーズ(エマ・ストーン)の姿も予告編で見ることができます。
 ここから妄想です。「みんなお互いの心を思いやるんだ」とスマホに向かって話しかけているジョーが、次のカットでは血だらけでマシンガンをぶっ放している姿もあります。やはり考えられるのはジョーのこの暴走によってテッドや町の住人は皆殺しにされてしまう展開なのでしょう。しかし、陰謀論にハマっている妻のルイーズが最後に夫を殺してしまうという笑えないラストもありえそうです。
 予告編を見ているとこのロックダウンされた町の疑いや陰謀論、分断されていく姿はアメリカだけでなく、この日本の現在にも重なってしまうところがあります。僕らの今を疑似体験してしまう一作なのかもしれません。

サブ1.jpg

『エディントンへようこそ』
12月12日(金) TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
配給:ハピネットファントム・スタジオ
© 2025 Joe Cross For Mayor Rights LLC. All Rights Reserved.

『ロマンティック・キラー』(12月12日公開)
公式サイト:https://romakira-movie.toho.co.jp/
予告編:https://youtu.be/j13qZjN_v9M

WEB用_ロマンティック・キラー_メインカット.jpg「第1回 LINEマンガ大賞」で銀賞を受賞、『少年ジャンプ+』でも連載され、2022年にはNetflixにて全世界配信でアニメ化されたマンガ作品を、『おそ松さん』などを手がけてきた英勉監督が実写映画化した『ロマンティック・キラー』。
 ゲームとチョコと猫が趣味で恋愛にはまったく興味のない女子高生の星野杏子(上白石萌歌)の前に、謎の魔法使いのリリが現れる。リリはなにか目的があり、杏子に恋をさせないといけないようです。魔法のせいなのか、杏子の前には様々なタイプのカッコいい男子たちがどんどん現れ始める。クールな転校生、天然幼馴染、世間知らず御曹司というメインどころの三人だけでなく、謎のSATや謎の兵士に謎の刀剣、病弱男子にタイムリープ男子など女子の妄想を具現化したような男子たちが盛りだくさんに登場するロマンティックコメディーのようです。
 ここからが妄想です。といいたいところですが、内容がすでに妄想炸裂しすぎていてびっくりしてしまいますし、もう笑ってしまいます。でも、予告編を見ても最後に杏子が誰か一人に恋するというイメージがわかないです。
 もしかすると実は主人公だと思っている杏子は実は本当の意味での主人公ではない可能性はないでしょうか。実はたくさんのイケメンたちそれぞれが主人公で、彼女を取り合うゲームだった。というオチはどうでしょうか?

WEB用_ロマンティック・キラー_サブ04.jpg

『ロマンティック・キラー』
12月12日(金)全国劇場にてロードショー
配給:東宝
©2025「ロマンティック・キラー」製作委員会 ©百世渡/集英社

『ボディビルダー』(12月19日公開)
公式サイト:https://transformer.co.jp/m/bodybuilder/
予告編:https://youtu.be/7QbA7gblIac

『ボディビルダー』メイン.jpg 大手海外メディアで、「『ジョーカー』のような鋭さ」、「『タクシードライバー』のトラヴィスを超えた」との称賛を浴びているイライジャ・バイナム監督作『ボディビルダー』。
 アメリカの片田舎で孤独な日々を過ごしている青年のキリアン(ジョナサン・メジャース)にはある夢があった。それは一流のボディビルダーになって、専門誌の表紙を自分が飾ることだった。
 キリアンは夢を叶えるために過酷すぎるトレーニングを行ない、ステロイドも使っていた。「手術はするな。傷跡が残るだろ。俺はボディビルダーだぞ」と忠告をしている医者に彼が言っているシーンも予告編で見ることができます。
 ここからは妄想です。「男の人生で大切なことはただひとつ。100%やり切ること。退路を断ち、全力で最高の肉体を目指す」と困惑している女性に向かって話しているキリアンの姿もあります。彼はすでに他者からどう思われているかもわからなくなっているようにも見えます。
 また、「誰も見たことのない衝撃の結末」というナレーションも気になります。憧れのボディビルダーの体に指で触れるシーンもあるので、もしかするとキリアンは一流のボディビルダーを殺してその肉を喰らってしまう。その味が忘れられずに最後はボディビルダーを専門に狙って殺してその肉を食べるカニバリズムの虜になってしまうというラストではないでしょうか?

サブ1.jpg

『ボディビルダー』
12月19日(金) シネマート新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷 ほか全国順次公開
配給:トランスフォーマー
©2023 LAMF Magazine Dreams LLC All Rights Reserved.


文/碇本学

1982年生まれ。物書き&Webサイト編集スタッフ。

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム