不安症と不思議な旅『ボーはおそれている』

- 『ボーはおそれている』
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『ヘレディタリー/継承』や『ミッドサマー』で知られるアリ・アスター監督作『ボーはおそれている』。本作では、『ジョーカー』などで知られる実力派俳優ホアキン・フェニックスが、多くの不安を抱える主人公ボーを演じ、彼の不思議な旅をスクリーンを通して体験できる一本。
中年男性のボー(ホアキン・フェニックス)は、荒れ果てたアパートにひとりで暮らしています。彼の住む通りでは腐敗した死体が転がり、凶暴な浮浪者や連続刺殺事件の犯人が徘徊するなど、常に危険と隣り合わせ。そんな中、母のモナを訪ねるため帰郷を決意しますが、隣人の騒音で寝過ごし、さらに鍵と荷物を何者かに奪われてしまいます。フライトに間に合わず、母を失望させてしまったボー。さらに、水と一緒に服用しなければならない薬を誤って口に入れ、パニック状態に陥ります。向かいの売店で水を買おうとしますが、彼がアパートを離れた隙に多くの浮浪者たちが押し寄せ......。
ボーが暮らす街は現実にありそうでありながら、そこに生きる人々はどこか正気を失っており、異様な雰囲気が漂っています。その不気味な空気感は、『ミッドサマー』のようにじわじわと観客の恐怖を刺激します。不安症のボーの旅を3時間見続けるのは、正直なところ疲れる体験ですが、ザ・ホラーな表現がほぼないにもかかわらず、鳥肌が立つようなアリ・アスター監督のマジックに終始引き込まれました。
ちなみに、IMDbによるとアリ・アスター監督は当初、この作品を「4時間に及ぶ悪夢のようなコメディ」と表現していたそう。それが凝縮され、約3時間の作品となった本作。もし4時間バージョンが存在するなら、今後ファン向けに公開されることを期待したいところです。
(文/トキエス)

