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わかっていても止まらない涙『ストロベリームーン 余命半年の恋』

『ストロベリームーン 余命半年の恋』 10月17日(金)公開

「令和イチ泣ける」と大きな反響を巻き起こした芥川なお氏のベストセラー小説『ストロベリームーン』が、ついに実写映画化されました。
小説が話題となっていたので読んだのが2023年。題名の副題にも『余命半年の恋』と書かれており、予告編を観れば誰もが"余命もの"だとわかる物語です。
短い、本当に短い恋の物語でした。

子どもの頃から病弱で、家の中だけで過ごしてきた桜井萌。15歳の冬、医師から余命半年と宣告されます。家族が悲しみに暮れるなか、高校に通うことを決意した萌は、同じクラスの佐藤日向に突然告白。恋人同士となった2人は、少しずつ距離を縮めていきます。
そして萌の誕生日に、"好きな人と一緒に見ると永遠に結ばれる"という満月「ストロベリームーン」を見に行く夢を叶えます。しかしその日を境に、萌は音信不通となってしまいます。萌が消えた理由とは。そして13年後に明かされる、萌の思いとは――。

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脚本は、『余命10年』(2022)や『いま、会いにゆきます』(2004)などを手がけてきた"ヒューマンドラマのレジェンド"岡田惠和氏。監督は『美しい彼〜eternal〜』(2021)などで注目を集める、若手実力派の酒井麻衣氏です。

酒井監督は『美しい彼』のドラマ版から監督を務め、作中に登場する月のシーンがあまりにも美しく印象的で、小説の世界観そのままだと話題を呼びました。
以前、酒井監督がメガホンを取った『夜が明けたら一番に会いにいく』でも、月の描写が印象的で心に残ります。
そして本作、タイトルからして"ムーン"。酒井監督が描くストロベリームーンを楽しみにしながら鑑賞しました。

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また、鑑賞中にもうひとつ、酒井監督の3つの作品に共通する点を発見しました。
いずれも高校生を主人公とした作品で、カップルが水をかけ合うシーンが登場します。この水のかけ合いは、日常ではなかなか見られない青春の1ページのようで、まるで少女漫画を思わせる印象的な場面です。
カップルのいきいきとした笑顔を見ているうちに、観る側も自然と楽しい気持ちになり、つい微笑んでしまいます。こうした明るく美しいシーンのあとに、つらい展開が待っているからこそ、涙がこぼれるのでしょう。
わかっていても、涙が止まりませんでした。
ただただ、何もできないという事実が悲しくて、拭ってもまた涙が流れてくる。久しぶりに、ここまで泣く作品に出会いました。

別れは寂しくてつらいものですが、それだけではない――そんな優しさと希望に満ちた物語になっています。
ぜひ劇場で、あなた自身の「ストロベリームーン」を感じてみてください。

(文/杉本結)

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『ストロベリームーン 余命半年の恋』
10月17日(金)公開

監督:酒井麻衣
原作:芥川なお「ストロベリームーン」(すばる舎)
出演:當真あみ、齋藤潤、杉野遥亮、中条あやみ ほか
配給:松竹

2025/日本映画/127分
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/stmoon-movie/
予告編:https://youtu.be/mvBx-q8jnJc?si=kTD5jbmMM3j2wowE
©2025「ストロベリームーン」製作委員会

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