「別れの悲しみ」を乗り越えるには...... 大切な人を失ったときに知っておきたい28のヒント

もう会えない人を思う夜に大切な人と死別したあなたに伝えたいグリーフケア28のこと
『もう会えない人を思う夜に大切な人と死別したあなたに伝えたいグリーフケア28のこと』
坂口 幸弘,赤田 ちづる
ディスカヴァー・トゥエンティワン
1,815円(税込)
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 年を重ねるにつれて増えていく、大切な人との別れ。老いた親、長年連れ添ったパートナー、親しくしてきたきょうだいや友人との死別は、何度経験しても、いや、それがたった一度だとしても、非常につらくて苦しいものです。そこで知っておきたいのが、そうした人々の悲嘆に寄り添い、支援する「グリーフケア」という概念。関西学院大学「悲嘆と死別の研究センター」でグリーフケアの実践活動をおこなう坂口幸弘氏と赤田ちづる氏の共著『もう会えない人を思う夜に』は、734の死別した人たちの体験談を集め、体系的に分類し、悲しみ(グリーフ)に対処するための28のヒントをまとめた一冊です。

 大切な人が亡くなったとき、喪失感に押しつぶされ、これからどうやって生きていけばよいかわからなくなる人も多いことでしょう。第1章「悲しみのうずのなかで」では、そんな時期のヒントが綴られています。「どうしようもない悲しみを抱えているときは、自分のペースで『ゆっくり、ゆっくり』が合言葉」(本書より)となります。「『今日を生きる』を3回続けると3日間が過ぎ、7回続けると1週間が過ぎていきます。それをくり返していくなかで、人生への気づきや生きがいが見えてくることがあるかもしれません」(本書より)とあるように、まずはとにかく自身の体をいたわって生活リズムを整えることが、回復への第一歩になるようです。

 「どうして私だけが......」「この苦しさはいつまで続くの?」と「悲しみ」の感情だけでは足りない人もいるかと思います。そうした人に向けて第2章で勧めているのが「こころをみつめる」です。死別体験についての知識や情報を増やす、信頼できる人に話す、自分の気持ちを文字で書く、そしてときには「考えない」時間を持つことも大切だといいます。

 続く第3章「まわりをみわたす」では「自分から『助けて』『手伝って』と言ってみる」「同じような体験をした人とつながる」、第4章「明日をむかえる」では「悲しみながらも楽しみを見つける」「だれかのためにできることを考えてみる」、第5章「会えない人とともに」では「想いを寄せる場所をもつ」「頑張りすぎず自分に優しく」などのヒントが紹介されています。

 死別の体験は個別性が高く、悲しみとの向き合い方に正解があるわけではないため、これら28のヒントがすべての人に当てはまるわけではないでしょう。本書にも「今の自分にとって役立ちそうなヒントだけを参考にしながら、自分だけの29番目のヒントを見つけてみるのもいい」(本書より)と書かれています。

 その中で一つ確かなのは、本書は「もう会えない人を思う夜に、なんらかの救いや癒し、生きる力になってほしい、と願いながら書いたもの」(本書より)であるということ。先人たちの体験から紡がれた知恵が詰まった本書は、絶望の淵にいる人にとって実践の書であるとともに、「自分もいつかまた前を向いて歩き出せる日が来る」という希望をもたらす一冊になることでしょう。

[文・鷺ノ宮やよい]

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