もやもやレビュー

名前に反して見どころが陸地戦『トップ・ガンナー』

トップ・ガンナー(字幕版)
『トップ・ガンナー(字幕版)』
ダニエル・ラスコ,ジェフ・ミード,エリック・ロバーツ,キャロル・アン・ワッツ,イグナシオ・マティニア,ジュリアン・キャベット,サラ・ウィルキンソン
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 アルバトロスだし『トップガン』のパクリかな?と甘いことを考えて視聴したら戦闘シーンの半分くらいが陸地。B級映画だから戦闘機のドッグファイトなんて期待してはいなかったがロクに射撃訓練もしていない設定のパイロット養成所の訓練生がトラップを仕掛けたり銃撃戦で無双したりする様は度を越えすぎてしびれるものがある。あと戦闘機の種類が色々間違っているような気がするのだけど、これは突っ込み待ちなのだろうか。

 舞台はメキシコにある米軍のパイロット養成基地。主人公のマーカス、ブラウン、スピールマン、バレットの4人が訓練に励んでいるところにロシア軍からウイルス兵器を強奪してきた海兵隊員のラッセンが乗るヴァルキリーが不時着。なお、作品に出てくるヴァルキリーの形状を見る限り無人機っぽいのだが、何でヴァルキリーを有人機にしてしまったのだろう。

 間もなくロシア軍が襲撃すると話すラッセンの言葉に燃える主人公たちに対し、教官は地上戦に向けて銃撃訓練をさせる。唐突に差し込まれる銃撃訓練。
その後、主人公たちはロシアの戦闘機や戦闘ヘリと戦うのだが訓練機で体当たりなど無茶苦茶なことをしたせいで飛行機が全滅。リアリティの欠片もないが、そもそも戦闘ヘリがMi-20と記載しておきながら別のヘリの形をしているので今さらリアルを求めても仕方がない。

 戦闘機を失ったので基地近くの森に移動し、追撃してくるロシア兵をトラップや銃で撃退する。敵を全滅させたので基地に戻るとロシア軍の別動隊に占拠され、ウイルス兵器も奪還されていた。迎えにきた戦闘ヘリで脱出するロシア軍をヴァルキリーで追いかけガトリング砲で蜂の巣に。それでもヘリは落下するだけなので爆発炎上せずにウイルス兵器を無事取り返す。ご都合主義の極みだが、一から十まで間違えている作品にそんな批判は無意味だろう。最後に唐突に訓練官の回想が入りエンドロールへ。

 徹頭徹尾荒唐無稽であらすじたり得る内容は皆無だが、内容に不備があろうとも突貫工事で人気映画にパクリ映画をぶつけ続けようとする執念はある意味ですごいと感嘆してしまう。
 もっとも『トップガン マーヴェリック』の公開が2022年なのに本作の製作年は2020年なので本当にパクリとして制作したのか疑問だが。「じゃあ、何のためにこんな酷い駄作を作ったんだ?」という疑問が湧いてくる。

(文/畑中雄也)

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