【無観客! 誰も観ない映画祭 第45回】『女バイキングと大海獣』
- 『女バイキングと大海獣 [DVD]』
- アビー・ダルトン,スーザン・キャボット,ブラッド・ジャクソン,リチャード・デヴォン,ジューン・ケニー,ジョナサン・ヘイズ,ロジャー・コーマン
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『女バイキングと大海獣』
1957年 アメリカ 66分
監督/ロジャー・コーマン
脚本/ローレンス・ルイス・ゴールドマン
出演/アビー・ダルトン、スーザン・キャボット、ジューン・ケニーほか
原題『VIKING WOMEN AND THE SEA SERPENT』
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『デスレース2000年』『金星人地球を征服』など、このコラムで何度も紹介してきた「低予算映画の帝王」「B級映画の帝王」ロジャー・コーマン作品。ネタに困ると、すぐこの人に頼るのは悪い癖ですが(苦笑)、今回も行かせてもらいます。バイキングとは、8世紀から11世紀にかけて北半球の海を荒らし回ったスカンジナビア(現在のノルウェー、スウェーデン、デンマーク)の海賊のこと。これに「女」を付けるところがコーマン節なのです。
昔々の北欧で、バイキングを生業とする部族の男達が海に出てから3年も帰ってきません。残された女達の欲求不満は爆発寸前で、ついに痺れを切らして男性捜索隊のメンバーを槍投げで決めることにします(槍投げって......)。彼女らはさすがロジャー・コーマンが集めて来ただけあってグラビアアイドルばりに魅力的で、台詞のない娘達は実際そうなのでしょう。そして北欧の海沿いにも関わらずノースリーブでミニスカで裸足と、リアリティよりビジュアル面優先です。子供や年配は見当たりませんが、「そんなの、いいんだよ」(コーマン)と問答無用で省略です。
さて15人ほどのメンバーが選抜されましたが、大きな船は男達が乗っていってしまったため、女達は7メートルくらいの帆船に寿司詰め状態で乗り込みます。もちろん船室などなくトイレも見当たらず(海へ直)、ベトナム難民のボートピープルのように全員が甲板で24時間過ごすのです(汗)。そして積荷に紛れて密航者がいました。なぜか男子なのに一人だけ村に残っていたオターです。女達より小柄なくせに「みんなを守りたいんだ」とイイカッコして付いてきちゃったのです。
一行が一晩を雑魚寝で明かした翌日、バイキングに「渦潮の怪物」と呼ばれる20メートルはある大海蛇が「ガオ~ッ」と出現します。原題にあるシーサーペント(正確にはグレート・シーサーペント)という、古の船乗りに怖れられた伝説の怪物です。そこへ泣きっ面に蜂で船上に落雷! 炎上する船から海面に投げ出された女達は見知らぬ海岸に漂着しますが、生存者は女6人とオターの7名に半減しました。演技のできる女優さんのみ残し、ここで台詞のないグラドルは退場です(ご苦労様!)。
だが、そこは蛮族が支配する小さな王国で、彼女らは兵士達に鞭で打たれながら城に連行されます。王と王子(バカ息子)が女達の髪の毛を触ったり、体をじっくり眺めたりとセクハラ三昧します。その夜は酒宴となり、キャバクラと化した王廷で女バイキング達は男どもの酒の相手をさせられ、お触りに抵抗しています。すると急に王子が、バイキングのリーダーの恋人で、今回は女達を引率するデジーアに腕相撲を挑みます。王子が先勝し、2回目は空気を読んでデジーアが勝ちを譲ります(大人!)。しかし1度女に負けた愚息に王は不機嫌になり、彼女らを洞窟に連れて行きます。そこには奴隷になっていたバイキングの男達が囚われていて、デジーアの恋人ベドリックもいました。王は3年ぶりに抱き合うカップル達を無理やり引き離し、女達は部族の男達の慰め者に、オターは洞窟の囚人に追加されます。
その夜、女達が監禁された牢獄の窓から一番小柄なデジーアの妹(超美少女)が脱出します。他のメンバーは飯を運んできた老婆に襲いかかりますが、門番に阻止されます。しかし子供の頃からベドリックに片想いし、デジーアをライバル視しているインガ(イジワル顔だが実はイイ奴キャラ)が、開いた扉の隙間からスルッと脱走に成功します。その頃、妹ちゃんは美少女キャラをかなぐり捨て、洞窟で居眠りしている見張りの頭を漬物石くらいの岩でガンガン叩き割り(汗)、鍵を奪い男達を解放します。だがこの作戦はインガから王へとチクらていて、先回りしていた兵士らによってバイキングの男達は再び囚われの身に戻ります。
インガは洞窟に戻されたベドリックに「2人で逃げよう」と誘うも簡単にフラれ、想いが叶わないと解ると王に「2人を殺して」と頼みます。翌日デジーアとベドリックの火炙りが決行されますが、炎が迫るベドリックに堪りかねたインガは王に中止を乞います。それが聞き入られないと、突然インガは両手を胸の前でクロスして「偉大なる雷の神よ。道を誤った巫女の願いをお聞き留めになり、神の力をお示しください」と祈り始めます。雷鳴轟き、雷雨が火を消します。インガは強力な巫女だったのです。バカ王子は雷がゴロゴロしているのに怒りに任せて剣を抜き、落雷に撃たれて即死するのでした(ほんとバカ)。
息子の葬儀を終えた王は「復讐だ!」(いや愚息の自業自得でしょ)と、バイキング達を皆殺しにしようとします。そして純愛一直線のインガはベドリックを逃がそうとして、追手の猟犬に噛み殺されるのでした。一方バイキング達は海岸で丸太船を見つけ海へ逃げますが、それを王達が追います。すると、そこへ再び大海蛇が出現! ベドリックが必死に剣を投げると、切っ先が大海蛇の額にグサ! 大海蛇はメッチャ痛そうに海面をのたうち回り、その断末魔のトバッチリを食って王の船は砕かれてしまいます。そして王は流血する大海蛇と共に海中へと沈んでいくのでした。
女だらけのバイキング、伝説の大海蛇、幼馴染みに片想いを続ける巫女......。「なんのこっちゃ」ですが、これぞロジャー・コーマン映画なのです。
【著者紹介】
シーサーペン太(しーさー・ぺんた)
酒の席で話題に上げても、誰も観ていないので全く盛り上がらないSF&ホラー映画ばかりを死ぬまで見続ける、廃版VHSビデオ・DVDコレクター。「一寸の駄作にも五分の魂」が口癖。