もやもやレビュー

あらゆる要素を1時間に詰め込みまくった珠玉の青春映画『ルックバック』

ルックバック
『ルックバック』
押山清高,勝股英夫,瓶子吉久,押山清高,押山清高,河合優美,吉田美月喜
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映画『ルックバック』は、藤本タツキによる、アプリ「ジャンプ+」にて読み切りで発表された漫画の映画化作品だ。

小学生4年の藤野は、漫画が得意な女の子で学級新聞に4コマ漫画を掲載し、友人からも褒められて得意げになっている。そこに、不登校の同級生、京本という女の子が4コマ漫画を描きたいと志願してきたところから物語が進み始める。京本の作品は、藤野の作品よりも、クオリティが一段高かったのだ。それが許せなかった藤野は死ぬほど努力するが、2年経って6年になっても京本の絵のクオリティに追いつくことはできなかった。ある日、藤野は絵を描くことを諦める。そして卒業を迎えた藤野は、京本の卒業証書を家に持っていくことを担任から頼まれる。嫌々持っていった藤野だが、そこから物語は加速していく...。

この、1時間足らずの映画を語ることは実に難しい。なぜなら様々な要素がこれでもかと詰め込まれているからだ。青春と挫折、努力と才能、出会いと別れ、自立と依存、喪失と回復。これだけではないが、これらの要素が、怒涛の如く思考を迫ってくる。退屈している暇がない。

創作することとは何だろうか。なぜ人は創作せずにはいられないのだろうか。ライターをしている著者自身でさえ、ときにわからないことがある。こんな割の合わない仕事、なんでやっているんだろう、そう思うこともざらだ。その答えを、というか、あらかじめぼんやりとわかっていたことを、この映画を観て、少し、顕在化させてくれた気がする。

(文/神田桂一)

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