もやもやレビュー

トップはやっぱり重要だと思った。『空飛ぶタイヤ』

空飛ぶタイヤ
『空飛ぶタイヤ』
本木 克英,林 民夫,長瀬 智也,DEAN FUJIOKA,高橋 一生,深田 恭子,寺脇 康文,小池 栄子,阿部 顕嵐,ムロツヨシ,中村 蒼,柄本 明,佐々木 蔵之介,六角 精児,大倉 孝二,津田 寛治,升 毅,笹野 高史,岸部 一徳
商品を購入する
>> Amazon.co.jp

 テレビドラマ化もされた池井戸潤作品初の映画化となる本作は、累計170万部突破の大ベストセラーが原作です。(2018年公開)

 ある日、トラックの脱輪事故が起きて女性が死亡します。整備不良を疑われた小さな運送会社社長・赤松徳郎(長瀬智也)は、独自に調べる中で車両の欠陥に気づきます。そして、車両の製造元の大手自動車会社・ホープ自動車のリコール隠しを突き止めます。

 人が一人亡くなっていても、大企業にとっては自らの体裁や保身が大事で...それでも怯むことなく巨大企業に果敢に挑んだ社長役を長瀬智也が好演しています。不屈の精神みたいなものを持つ役どころが似合う人だよなぁと、役者の長瀬智也をまた見たくなりました。
TOKIOも解散しましたしね...余談でしたね...

 話を戻しますが、救いだったのは、ホープ自動車の中でも、リコール隠しの実態を掴み、おかしいと訴え動こうとする人(ディーン・フジオカ、ムロツヨシ、中村蒼)がいたことでした。でも、結局は、巨大な組織によって、内部告発する予定だった週刊誌の記事をあっさりもみ消されるわ、いとも簡単に左遷や人事異動させられるわと、一筋縄ではいかないその壁の高さを痛感することになります。

 ちなみに、本作は、2002年に起きた三菱自動車製大型トラックの脱輪による死傷事故、三菱自動車によるリコール隠しが元になっているのだから驚きですよね。ドラマや映画で出てきそうな話が現実にあったことが信じられないと言いますか...。

 また痛感したのが、リコール隠しは絶対してはいけないことだという前提で、しかしディーン・フジオカ達のようにおかしいと思うことに対しておかしいと正直に動ける人が、実は稀だということです(だからこそ感動したりすごいなと思うわけで)。社員たちは意志を持って働いているけれど、その多くは疑問に思うことがあったとしても、生活のため家族のために組織に抗うことなく働くしかありません。もちろん長瀬智也演じる運送会社社長の下で働く従業員も同様です。大企業にたてつくより、和解策で提案された大金をもらっておとなしくした方がいいと考えた大倉孝二演じる従業員のような人の方がが多いとも想像できます。皆それぞれの正義があるんですよね。それは否定できないと思いました。

 だからこそ、トップに立つ人の人間性や器が問われるのだと思いました。本作ではトップを岸部一徳が演じています。何とも憎い役どころを好演されています。他にも、高橋一生や、佐々木蔵之介などそれぞれの立場で一生懸命戦っていたのがとても印象的でした。(あとやっぱりイケメン!)

(文/森山梓)

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム