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『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』

ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!(字幕版)
『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!(字幕版)』
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 ヘヴィメタルについての知識はせいぜい『デトロイト・メタル・シティ』くらいしかなく、おそらく正確ではないだろうと思っていたところにこの作品を視聴すると、ヘヴィメタルへの認識が大きく歪みそうになる。「終末シンフォニック・トナカイ粉砕・反キリスト・戦争推進メタル」というジャンルに誰も突っ込まないし初のオリジナル曲はトナカイを屠殺する機械からインスピレーションを受けたものだというし、めちゃくちゃ面白いことは間違いないけども視聴後に「ヘヴィメタルって何だっけ?」という疑問が脳内に湧き続ける。いや、面白いことには違いないのだが。

 本作の舞台はタイトル通りフィンランドで巨大メタルフェスへの参加を目指すバンドのロードムービーだ。フィンランド北部の田舎の村に住む主人公のトゥロは4人組バンドのボーカルで結成から12年間ライブ経験もオリジナル曲の製作もしたことのないコピーバンドで村人からは「お前らの音楽がひどくてトナカイが自殺しちまう」などと馬鹿にされる日々を送っている。トゥロが惚れている花屋のミーアの父親は警察官で当然バンドメンバーを敵視している。

 村の鼻つまみ者として扱われるメンバーだが一念発起してトナカイを屠殺する機械の音からインスピレーションを受けたオリジナル曲を製作。曲が完成したタイミングにノルウェーでメタルフェスのプロモーターと出会いデモテープを渡しフェスの会場を目指すロードムービーだ。

 フェスへ参加するにあたり初めて付けるバンド名は「直腸陥没」。アーティスト写真は高速道路のオービス。地元で行う初めてのライブはトゥロが緊張で嘔吐し村長の顔にぶっかけ――などなど、ブラックメタルに対する誤解を助長するのか事実を事実として描写しているのかよく分からない塩梅になっている。

 ライブの失敗に落ち込んだトゥロは解散を宣言したが、バンドのドラマーが運転している車がトナカイに激突して事故死する。メタルどころか北欧に対しても妙な偏見を抱いてしまいそうだ。

 トゥロは新たなメンバーを自身が勤める保護施設から半ば無理やり加入させ、死んだメンバーの棺を持ってノルウェーのフェスへと向かう。当然誘拐と遺体の盗難の容疑でメンバーは警察やノルウェーの国境警備隊に追われるもフィヨルドに飛び込みバイキングのコスプレをした集団と出会いバイキングの船で会場へ。
 会場に着きプロモーターと出会うと、上記の振る舞いがメタルということでフェスに参戦することに。案の定トゥロは緊張でゲロを吐くもメタルなので歓迎される。
 ライブは大成功に終わり警官隊がなだれ込むと主人公たちは「また戻ってくるぜ」と笑顔で逮捕されエンドロールへ。

 多分、色々なメタルネタが盛り込まれているのだろうと察せられるシーンはあったがメタル知識皆無なので分からなかった。しかし笑える下品さとばかばかしさの連続でエンタメとしては十分楽しめる内容だった。
 しかし、全くメタルへの憧憬やら尊敬やらの念は湧き起らないので制作陣は怒られないのだろうかと要らぬ心配をしてしまうレベルで全編酷い。

(文/畑中雄也)

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