『ワンダー 君は太陽』のアナザーストーリー。『ホワイトバード はじまりのワンダー』
『ホワイトバード はじまりのワンダー』 全国公開中
今回紹介する『ホワイトバード はじまりのワンダー』は、日本では2018年に公開された『ワンダー 君は太陽』のアナザーストーリーだ。2018年に公開されたワンダーは泣ける、感動すると世界中で大ヒットした。
人とは違う顔をもつ主人公のオギーは10才の男の子。幼い頃から母親と自宅学習をしていたが、小学校5年生になるとし初めて学校へ通うことを決意する。容姿のことで陰湿ないじめにあうが、彼の行動によって少しずつ同級生の心が変化していうという物語だ。
本作は『ワンダー 君は太陽』で陰湿ないじめをして学校を退学処分になったジュリアンに彼の祖母が経験した過酷な過去の体験と甘酸っぱい恋物語から人に優しくすることの意味を問いかける物語となっている。
本作を鑑賞して日本とアメリカでいじめに対する処罰の重さの違いを痛感した。日本ではせいぜいいじめた生徒を呼び出して今後しないように注意をする程度。いじめられた生徒が登校することができなくなっても、いじめた生徒への罰はほぼない。だが、アメリカではいじめをしたら小学生だとしても停学処分や退学処分になる。
日本では、現在進行形で年々増加するいじめ問題に対して、大人は増加していると把握するだけで大きな対策はなにもできていないのが現状だ。SNSを利用して学校が終わった後の時間もつながり続ける関係は、いつどのタイミングで自分がいじめのターゲットになってもおかしくないというくらいで、そんな気の休まらない時期を経験したことのある人も少なくないはずだ。
人に優しくすることは簡単なことではない。それは自分の人生を大きく変える選択になることもあるだろう。自分が自分の気持ちに正直に生きるということは、とてもシンプルで素敵なことだ。その反面、人間関係や社会的立場など様々なしがらみとの葛藤の中で選択肢も増え選ぶことが難しいと感じる場面も多くなる。それでも選択することの強さとその中にある優しさを本作は届けてくれた。
自分の中にたった1つ大事にできるものがあれば、そのために頑張れるし、他人にも優しさを向ける余裕が生まれるはず。いじめっ子より周囲に優しくできる心を持った人間がどれほどかっこいいのかを教えてくれるラストが素敵だった。
(文/杉本結)
『ホワイトバード はじまりのワンダー』
全国公開中
監督:マーク・フォースター
出演:アリエラ・グレイザー、オーランド・シュワート、ブライス・ガイザー、ジリアン・アンダーソン、ヘレン・ミレン
配給:キノフィルムズ
2024/アメリカ/121分
原題:White Bird
公式サイト:https://whitebird-movie.jp
予告編:https://youtu.be/RRp6Yp6cTxM
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