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友達にノートを返すだけの話が、こんなにも大冒険に!?『友だちのうちはどこ?』

友だちのうちはどこ?(字幕版)
『友だちのうちはどこ?(字幕版)』
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地図アプリという便利ツールのおかげで、行きたいところにたどり着く術は瞬時にわかるようになった。いまや「自力でどうにか行ってみようよ!」と口にしたら「なんで?」と不思議がられるのがオチである。

『友だちのうちはどこ?』(1987)は、「地図アプリってなに?」という時代の映画だ。83分という上映時間の大半を、友だちの家を探すということだけが占めている。そんな話を1時間強も見ていられるか!とひょっとしたら思うかもしれないが、これがとんでもない大冒険なのだ。

主人公は8歳のアハマッド。教室で彼のとなりに座るのは、モハマッド。三回ノートに宿題の答えを書き損ね、もう一度やったら退学だと担任に脅され、号泣している。

モハマッドが怒られたその日、アハマッドはいつものように帰宅し、かばんを開く。するとなぜかノートが二つ出てくる。モハマッドのと、自分のだ。やばい!モハマッドが退学させられちゃう!それも、自分のせいで!罪悪感に押しつぶされそうになったアハマッドは、モハマッドにノートを返そうと動き出す。住所こそ知らないが、となりの村に住んでいることは知っている。どうにかなる!そう思ったのも束の間。モハマッドという名前の人は、わんさかいた。そしてとなりの村は想像以上に広かった。困った!人に聞いてまわるが、手がかりとなりそうな人とはすれ違うばかり......予想だにしない、スリリングさが満載である。

度肝を抜かれるのはスリリングなところだけではない。今にも泣きそうな顔で彷徨うアハマッドの話だけではないところにもハッとする。凝り固まった考えに縛られて、アハマッドの責任感ある行動力を褒めるどころか、関心もサポートも見せない大人たちの話でもある。大人たちに相手にされなくてもめげずに、まっすぐにモハマッドを思いやり行動し続けるアハマッドに、胸が熱くなる。

(文/鈴木未来)

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